トイレやおしぼりの
使い方にご注意を

 店側は客のどんなところを見ているか、というのは一つのポイントかもしれない。たとえばトイレの使い方だ。

 多くの店が男性客にも座って用を足すようお願いしているのは、当然、尿をこぼさないようにという意味で、女性も同じトイレを共用する店ならなおさら守ってほしいルールである。かといって、こぼさなければいいというものでもない。立ってする客の後は、便器のへりに尿が飛んでいるのですぐわかる。バーテンダーはオペレーションの合間を縫って、定期的にトイレチェックに入るもの。どんなにイケてる客を装っているつもりでも、トイレの使い方がイマイチな人は印象が悪い。

 おしぼりの使い方も、傍らで見ていて「うへえ」となるときがある。顔を拭うのは、品はないかもしれないが問題はない。ぜひすっきりさっぱりして、おいしいお酒を楽しんでもらえれば幸いだ。

 しかし、チーンとはなをかむ行為は論外。あるいは、腕やらすねやらをぼりぼりかいているうちにかさぶたでも剥がれたのか、おしぼりに血の斑点をたくさん残して帰る客がいた。どちらも言ってくれればティッシュやばんそうこうをお渡ししたのに……。これも、隣の客からすれば不愉快だろう。

 逆に、かつてはあまり好まれないとされていた行為でも、現在は少し事情が変わってきたものもある。たとえばクレジットカードの利用は、店側に少なからず手数料負担が発生するため、一定金額以上のときでなければ歓迎されないものだった。しかし近年はキャッシュレス化が進み、以前よりも手数料が少しだけ安くなったことも手伝って、店によってはあまり目くじらを立てる問題ではなくなっている。

 また、そもそも酒が飲めない客を敬遠する店も、以前ほど多くない印象を受ける。筆者の店では、まったくの下戸の人でも、ノンアルコールのフルーツカクテルなどで対応していた。ジュースとしては高額だが、それでもいいなら店側は歓迎だ。

 ――と、いささか口うるさくいろいろ述べてしまったが、店により細かな方針の違いはあるだろう。オーセンティックバーでももっとゆるい雰囲気の店もあるし、逆にもっと厳しい、ドレスコードがある店だってある。

 大切なのは、お互いへの気遣いとリスペクト。それが自然に身についている人は、バーにとって末永くお付き合いしたい大切な客なのだ。