“場慣れ感”が
裏目に出るパターンも多数
オーセンティックバーでは、どうしても客の年齢層が高くなる。ウイスキーマニアを自称する20~30代や、深夜の河岸を求めて若者グループが飛び込んでくることもあるが、基本的には40~60代がボリュームゾーンだ。生ビールが280円で飲める時代に、1杯1000~1500円もするカクテルを売る場所なのだから、それも当然だろう。
だからと言えば語弊があるが、変に場慣れした、横柄な客が散見されたのは事実である。バーテンダーが明らかに自分より年下だからなのか、初対面なのにタメ口のレベルを超えて失礼な物言いをするシニアが、定期的に現れたものだ。
「ねえ、何飲んだらいい?」
「ここは何時までやってんの?」
「おい、お勘定してよ」
面白いもので、初めて入ったバーでこうした言葉遣いをする客というのは、たいてい声量が大きい。それでいて、品良く飲んでいる他の客が迷惑していることなど、頓着もしない傾向がある。
バブル景気の頃の残滓なのか、この手合いにはバーテンダーにマウントを取りたがる人も少なくなかった。「昔、銀座のどこそこでよく飲んでいたんだよ」と業界では知られた名店の名をやたらと出したがったり、「普段は30年物のアイラを飲んでいるんだけどさ」などと高級志向をアピールしたり。
そんな客にも笑顔で対応するのがプロだから、バーテンダーも対抗心を燃やしたりすることはない。しかし、客のふりをして隣で飲んでいる筆者からすると、どうにも場を荒らされている感が拭えない。
カクテルを飲んで、「銀座のあそこはもっとこうだった」などと味を比較するような輩も時折見かけた。決してまずいと言いたいのではなく、「自分はツウだ」と主張したいらしい。バーテンダーそれぞれの個性を楽しむのも、カクテルの醍醐味だと思うのだが。
