社会を良くしていくことが
ビジネスに組み込まれている

――日本でのムーブメントのギアを一段上げるということですね。あらためて伺いますが、Bコープ認証の意義は何ですか。

 Bコープ認証は、グローバルで、様々な産業や規模の営利企業が、より良い社会の構築に向かって進むことを、第三者機関が1つの基準で認証するところに意義があります。 

 より公平で、よりリジェネラティブ(再生可能)な経済に、既存の資本主義を変えていこうとしているのです。「ベネフィット・フォー・オール」、つまりすべての人々とコミュニティ、そして地球のベネフィットのために、ビジネスを営んでいくことにコミットしています。

 CSR(企業の社会的責任)としてではなく、社会を良くしていくことがビジネスに組み込まれていることを求めています。売上げや利益が上がれば上がるほど、社会へのインパクト(良い影響)が高まっていくことを目指しています。

 例えばSDGsはその目標自体は良いことだと思うのですが、あくまで当事者による目標設定や行動の意思表示です。対してBコープは、企業の過去1年以上の実績に基づきB Labという第三者認証機関からの評価やチェックが働くところがより良いのです。

――「SDGsウォッシュ」と言われるような、見せかけの活動は認められないわけですね。Bコープ認証は、企業や商品のブランディングとか、人材採用での優位性といったビジネス面でのメリットはありますか。 

 もちろんあります。ただ、日本ではまだ消費者認知について欧米ほどには進んでいないので、これからだと思います。

 一方で、人材獲得面では、若い世代にはきちんと伝わって、効果が出ています。例えば、Bコープ認証を取得した企業がそのことを告知したら、途端に求人サイトでの応募がそれ以前の3倍に上がった例があります。

 サステナビリティに関わる仕事に就きたいという20代、30代の人々は増えているけど、どの企業であればそれが可能かなかなかわかりません。そのたぐいの正しい情報を、信用できる形で得る方法が少ない中で、Bコープ認証は有力な見極め方法です。

 また、Bコープはポジティブテストなので、認証取得後も、3年後の更新時までに、どの項目をもっと良くしていくべきかの目標指標にもなります。

 さらに、何をどうすれば社会のために良い経営となるかがわかりにくい中で、BIAはそれに向けての行動指針としても有効です。たとえBコープ認証を取得しなくても、より良い経営へのヒントが詰まっているからという理由で、活用してくださっている経営者は増えています。

――消費者はどうですか。

 例えば私たちのブランドovgo Bakerは、もともとサステナビリティなどに関心がある方が顧客として多いので、Bコープ認証はブランド強化になっていると思います(編注;詳しくは本連載2回目参照)。

 ただ、現時点の日本市場では、一般消費者より企業のほうがBコープへの反応度合いは高いですね。化粧品の製造・販売や輸入代理店業を展開している某Bコープ企業は、展示会に出店すると、Bコープのマークに反応して取引先が拡大することがあるようです。

 消費財を扱う企業は、原材料の仕入れ先選択において、よりサステナビリティに貢献していかなければいけないという社会的な流れがあるので、Bコープ認証が優位に働くこともあるという話は聞きます。