Bコープ認証の基準を
会社作りの指針とした

――Bコープ認証取得のきっかけは何だったのですか。

 以前からフェアトレードは大切にしてきて、その表示があるチョコレートや紅茶を購入していました。三井物産の法務部で働いていた時に、取扱商品のサプライチェーンがどうなっているか、人権問題はないかということを精査し、認証制度も調査していました。

 その過程で、フェアトレードは人権、FSCは森林という形でそれぞれの認証の対象が限定されて「商品」に付与されるのに対して、Bコープは包括的に社会の課題をカバーして「事業」を対象にしていることを知り、Bコープはより良い認証制度だと思いました。

 その後、オブゴ・ベイカーを起業して、事業が順調に伸びていった時に、今社長をやってくれている 大学時代の先輩が入社して株式会社となり、従業員が増えていく中で、最初からうちの会社はBコープの基準にのっとって整備していこうと考えたのです。すでに事業を始めて2年経っていて資格はあったので、社内規定などをBコープの認証基準であるBインパクトアセスメント(BIA)に合わせて作っていきました。

 インパクトを出していくには、商品をより多くの人に食べてもらうことが大事ですので、事業のスケール(拡大)とBIAに則った整備を並行して進めました。

好きなことと社会課題の解決を同時に実現するための起業とBコープ認証アメリカを旅して出会ったヴィーガン仕様の美味しいクッキーを日本で実現した。

――インタビューの最初に話されていた「BIAを会社作りの指針にする」ということを実践したわけですね。

 BIAは、スタンダードな指針になるんです。例えば「ベネフィット・フォー・オール」で、社員全員が意思決定に参加できるとか、決定権は持ってなくても誰でも意見が言え、皆がその意見を聞く環境づくりのルールは、個人的にも好きで、大切にしています。 

 BIAの項目にオープンブック、つまり帳簿の公開というのがあるのですが、それは文言通り実践しているだけでは効果がありません。会社のPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)を社員に公開しても、一般的には全員が関心を示すわけではないからです。

 でも、財務諸表の読み方を社員に伝えることが情報共有や経営参画につながり、会社組織を公平なものに近づけるとBIAで説明され、ポイントが上がるとなれば、実効性が出てきます。実際、業績データに社員が意味を見いだして、発言が多くなります。

 それが経営ガバナンスの面で公平性を担保することにつながります。現在、BコープグローバルでBIAの改定作業中ですが、こうした面が強化されるようです。どれくらいの頻度で、従業員が経営に声を出せるようになっているか、などです(編注:連載3回目参照)。 

――貴社は2年間をかけて、2022年12月にBコープ認証を取得しました。どんなところが大変でしたか。 

 2年のうち1年は審査待ち時間でした。それもあって、個人的にB Lab日本支部の必要性を強く感じていました。うちは小さな会社で、会社の基準作りにBIAを使ったので、申請書類の作成・提出には半年もかかっていません。

 何が大変だったかと言えば、なんとなくカルチャーとしてはあった基準事項を明文化していかないといけないので、そういう手を動かす作業ですね。また、基準に合わせて新しいことを多少はやらないといけない部分はありました。それでも実質的には半年くらいです。

 今、審査プロセスはスピーディになっています。ハードルは、その会社の状態次第です。BIAに合う制度が全くない場合、会社全体の活動を変えて取り組むのに1年、その証明のための資料作りに1年かかると、合計2年間は必要かもしれません。

――B Labグローバルによる審査インタビューで、具体的に突っ込まれて困ったことはありましたか。

 当時は情報が足りなくて、よく分かっていないことが多かった。社内制度の不備を直すというよりは、BIAの設問の意味と自分たちが思っていたこととの間に齟齬が多くあり、それがインタビュー期間を長引かせる要因になりました。

 前述した(連載1回目)BMBJの役割は、まずは、英語と日本語の違いなどから発生するそうした齟齬を解消していくことにあります。

――Bコープ認証取得で、金融機関からの信用度が高まり、融資条件が良くなるということはあるのでしょうか。アメリカでは、金融機関からの信用度が高まるようですが。

 日本ではまだありません。金融業界でも認知が不足していると思いますので、BMBJの仕事として、今後は金融機関との連携を進めていきます。

 オブゴ・ベイカーでBコープ認証を取得して、その告知リリースを出したら、金融機関から融資の話を受けました。先方にも、サステナブル関連の融資を拡大する必要性があったようでした。でも、実際に話をしてみると、最終的に、「信用協会の保証がないと貸せない」ということでした。アプローチしてきたのは金融機関の方だったのに、です。

 銀行も、サステナブル融資の必要性は分かっていても、既存の制度をなかなか越えられません。今後、他のBコープ企業で同様の問題に直面して、銀行の融資担当者に「Bコープとは何か」をその都度説明するみたいなロスはあって欲しくないなと思い、BMBJの活動をしっかりやっていくつもりです。

――アメリカに進出するうえで、 Bコープ認証は有利なのですか。

 それは、もちろんです。今の社長が入社してくるタイミングで、将来の海外進出も検討していて、そのことはBコープ認証取得の後押しになりました。商品のヴィーガンやプラントベースは海外の人には伝わりやすいけど、社員の事業参画とか原材料の調達方針を説明するのは大変で、その問題をクリアする点でもBコープ認証のマークは効果的です。

 欧米では認知度が高いし、特にミレニアル世代だと信頼度が高い事業と思ってもらえます。サステナブルなブランド商品として海外に展開していくのであれば、Bコープ認証は事業の前提になると思っていました。

――今、貴社の地域展開はどうなっているのですか。

 直営店は都内に3店舗。原宿、日本橋・小伝馬町、虎ノ門ヒルズです。また、日本全国のカフェやセレクトショップで販売しています。クリスマスやバレンタインなどのイベントごとにポップアップ店を展開しています。

 海外はイベントベースで、ネットワークを構築しているところです。アメリカでイベントを開催してお客さんの反応を見たり、他国でもヒアリングしたり、今後の展開を検討しています。 

*第3回は明日公開で、Bコープ認証の改定の方向性について伺っています。