『週刊文春』黄金時代の編集長の弁

 編集長になってからは経営から言われるワケのわからない要求に答えている「フリ」をしながら、対外的にはいかに自分の雑誌が素晴らしい雑誌かを吹聴し、さらには売り上げを伸ばしていかないといけない。

「世間的に素晴らしいこと」と「雑誌の売り上げ」はだいたい反比例してしまうものなので、その矛盾をどう解消するかにひたすら頭を悩ませることになる。

 悩みながらも新しいことを始めようとすると「こんなことプレジデントでやっていいのか」などと社内から突き上げを喰らう。

 それをなんとか説明しにいくと、今度はそれを見た部下が「本当にプレジデントとしてやってはいけないこと」を始めようとしたりする。ここで部下の意見を潰せば、自分のやりたいことだけは突き通し、部下の方は守らないのかという批判も当然出てくる。

 とはいえ、媒体として「やっていいこと」と「悪いこと」の基準を明示するのは本当に難しいものだ。現場に対して、上から一方的に方針を押し付けるようなことをしても、あまりいい結果を生まないのではないかという心配もある。

 1990年代に週刊文春の黄金時代をつくった花田紀凱氏(現在、月刊Hanada編集長)は「私が読みたいと思うもの、私が知らないこと」が掲載基準と言っていて、なるほどと思った。

 ただ、それにしたって、すべての基準の明示は不可能であろう。最終的には花田氏の人格を信じて、花田氏が面白いと思ったことを突き詰めていくしかない。この辺りの難しさは、出版だけでなくどの会社も抱えているのではないか。