日立製作所とパナソニックは今年、北米のIT企業を巨額買収するという大ばくちに打って出た。旧来の“ものづくり”から、デジタルトランスフォーメーション(DX)事業への大転換を加速するための決断だ。だが、企業価値が暴騰しているIT企業の買収は減損リスクが付きまとう。特集『日立 最強グループの真贋』の#6では、日立とパナソニックによる巨額買収の成否を徹底検証した。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
国内白物家電の2強が挑む
大胆なデジタルシフト
奇しくも、日系の家電大手の日立製作所とパナソニックが、同時期にDX事業を強化するため、巨額買収に踏み切った。
日立による米グローバルロジック買収(買収額1兆0368億円)と、パナソニックによる米ブルーヨンダー(同7700億円、追加買い増し分のみ)買収のことだ。
洗濯機や冷蔵庫といった大型の白物家電で国内市場を席巻してきた両社。コスト競争力では、日系メーカーをとうに超えていた中韓家電メーカーが、デザインや機能面でもクオリティーを上げてきており、いよいよ、日系メーカーの独壇場だった国内市場の参入障壁が崩れようとしている。
そこで両社は、ものづくりに重きを置く製造業モデルから脱却して、デジタル化をけん引する企業へと変貌しようとしている。
今回の巨額買収の目的は、デジタル領域を拡充するというシンプルなものだ。
ただ、それに加えて日立やパナソニックの経営陣は“副次効果”も期待していることだろう。すでにデジタル化された外国籍企業を仲間に組み入れることで、組織の体質変革や事業構造の転換を進めることができる公算が大きいのだ。
では、大きな賭けに出た2大家電メーカーに勝算はあるのか。どちらの方が「脱・製造業」モデルの構築に近づいているのだろうか。両社の成否を徹底検証した。