当時はスポーツ新聞氏の「ロト」、現在の「レキップ」が大会を主催していて、そのロトの新聞紙の色が黄色だったのでシンボルカラーは黄色に。フランス語で黄色いジャージという意味のマイヨジョーヌと呼ばれるようになった。

 そしてマイヨジョーヌを史上初めて着用したのも、その年の初日で首位に立ったクリストフだった。さらには総合2位に30分差をつけながら、最後から2番目のステージで再びフロントフォークを折ってしまい、2時間という致命的な遅れを取ってマイヨジョーヌを手放したのもクリストフだった。

 たった1枚しかない黄色いジャージ、マイヨジョーヌへの憧れ。世界中のサイクリストにとって、それを着用することは夢の夢であるという。わずか1日だけでも手中にすることがあれば、その選手の生涯においてとてつもない影響を与えることは言うまでもない。

 フランスの33歳、ロマン・バルデ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)は2024ツール・ド・フランス初日に優勝。ステージ優勝そのものは4度目だったが、初めて首位となりマイヨジョーヌを獲得した。

 2012年にフランスチームでプロデビューしたバルデは端正な風貌と女性モデルのように細身の身体が特徴の人気選手だ。2016年にツール・ド・フランス総合2位、2017年同3位、2019年に山岳王。バルデにすランス人の大きな期待がかかった。しかし東欧や南米大陸勢などの躍進に、マイヨジョーヌには手が届かなかった。

 2021年に現在のオランダチームに移籍し、総合優勝ではなくステージ優勝を狙う走りに徹した。すでに引退することを決めている。2025年6月に生まれ故郷で開催されるレースでやめる。だからツール・ド・フランスを走るのは今回が最後。「たった1日でもいいからマイヨジョーヌを着たい」というバルデの夢が叶った。

 バルデが引退し、市販のマイヨジョーヌでもいいからサインをしてお世話になった人に手渡せば、それは本物のマイヨジョーヌとしてもらった人は大喜びするはずだ。マイヨジョーヌが誕生して100年以上になるが、その輝きは変わらず、そして地元フランス勢は1985年を最後に、最終日までマイヨジョーヌを死守できない年月が続いている。

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ツール・ド・フランス2024

第15ステージ(7月14日)

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