不安は決して悪い感情ではない
経営は「7割が守備、3割が攻撃」

――人が合理的な行動を取れない大きな理由に不安という感情があります。不安が大きくなると、冷静な判断ができなくなる。この厄介な感情とはどう付き合いますか。

 私は不安の塊ですよ。大学を卒業してから数年間は就職せず、マージャンで飯を食べていた時期がありました。正直、ずっと不安でしたよ。この生活は続かないよなと。案の定、(マージャンが強すぎたことで)相手がいなくなりました。稼ぎ口がなくなって、ディスカウントショップを始めたわけです。

 不安は、決して悪い感情ではありません。むしろ不安がない人は、無鉄砲になって失敗しやすい。私は経営者になってから、不安を「守備」という言葉に置き換えてコントロールするようになりました。私の頭の中は、7割が守備、3割が攻撃。ドン・キホーテというブランド名は野心的ですが、それはあくまでキャラクター作りです。創業時以外、一か八かの勝負をした記憶はありません。

 間違ってはいけないのは、守備は攻撃のためにある、ということ。守備を固めているから攻撃的になれるし、失敗のダメージを最小化してまた次の攻撃に入れる。守備が整っていると何度も挑戦できるから、いつか大勝ちできる。幸運の最大化と不幸の最小化につながります。ボクサーでいえば、ほとんど守っているんだけど、虎視眈々(たんたん)とチャンスを狙って絶好期に思い切りパンチを繰り出すようなものです。

 私ほど堅実な経営者は、いないんじゃないですかね。見た目と中身がこれだけ違う人間も珍しいでしょうね。見た感じは、怪しげじゃないですか。いかにも一世を風靡(ふうび)してすぐ駄目になりそうな雰囲気ある。一発屋の典型に見えるでしょう。

 ところが、実際は34期連続増収増益で非常に堅実。現在の売り上げの2兆円は、1年で倍になるような決断はせず、複利の成長を継続してきた結果ですから。