個々人の「攻め」「挑戦」「楽観主義」が
日本の集団としての運を高める

――テクノロジーや情報はそろっている。今の時代に足りないものは何でしょうか。

 情熱ですね。運の総量は人によって違いはありませんが、情熱には個人差がある。今、社会の情熱の総量が下がっています。私たちの青年時代は、学生を中心に全共闘運動などと言って訳のわからんことを真剣に騒いでいたわけですよ。主張や行動の是非はともかく、情熱の量はすごかった。

 それと比較して、今の若い人は皆、能力は高い。意味不明な主張をしない。片方で、冷めてもいる。今のような平穏な時代、ほとんどの人が一定の幸せを感じながら生きている中で、わざわざ挑戦する必要がないと言われれば、その通りかもしれません。

 昔の世代は戦後の焼け野原からスタートした、社会的ショックを経験したからハングリーだった面はあるでしょう。でも、国家的なショックはあまりにも犠牲が多すぎる。そんなことは誰も望まないし、起きて良いわけがない。

 だったら、少しずつみんなで取り戻そうよ。守備を固めながら、大胆にトライしようよ。失敗したって命を取られるわけでもないし、何度でも挑戦できるわけですから。

 一人ひとりがもう少し未来を信じて、楽観的に冒険する。経済政策や財政政策なども大切ですが、個々人の「攻め」「挑戦」「楽観主義」が、日本の集団としての運を高めるのだと思います。

やすだ・たかお/1949年、岐阜県生まれ。73年慶應義塾大学法学部卒業。78年、東京都杉並区にディスカウントストア「泥棒市場」創業。80年ジャスト(現パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)設立、社長就任。89年、東京都府中市に「ドン・キホーテ」1号店開業。2015年にPPIH会長兼CEOを退任し、創業会長兼最高顧問に就任。

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