スタートアップ写真はイメージです Photo:PIXTA

新NISAのスタートなどもあり、投資を始める人が増えています。株式や投資信託といった“メジャー”な投資以外にチャレンジしてみたいと考えている人に、筆者がお伝えしたいのが「株式投資型クラウドファンディング」という選択肢です。ベンチャー企業に投資するエンジェル投資は個人投資家にはハードルが高いものでしたが(「3つの壁」として記事中で解説します)、その壁に挑戦する新しい選択肢こそが、株式投資型クラウドファンディングなのです。

※本稿は、波多江直彦『日本一やさしい スタートアップ投資の教科書』(ビジネス教育出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

株式会社の起源と東インド会社

「エンジェル投資」という言葉は美しいし、夢もある。しかし一方で投資に対しては「ギャンブルみたい」「危なそう」「すべてを失うのでは」という不安を感じる人も少なくありません。

 ここで改めて企業に投資するとはどういうことか、歴史を振り返りつつ理解してみましょう。

 投資とは、もともと大勢の利益を守るために発明された仕組みなのです。投資と株式会社の始まりについては諸説ありますが、現在では17世紀の「オランダ東インド会社」が発端と言われています。

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 コロンブスやマゼランといった冒険家たちが活躍した大航海時代。ヨーロッパの人たちはアジアの貴重な香辛料などを持ち帰ることで莫大な富を手にしました。しかし今と違ってGPSなど便利な技術はありません。はるか遠くのアジアや新大陸を目指す船旅は過酷で危険が多いものでした。

 嵐や疫病に見舞われ、多くの人の命が失われ、また船を失い、積み荷が失われれば、すべての財産を失い、破産する危険もありました。この時代、船主にとって航海はうまくいけば莫大な富が得られ、失敗すれば船も財産もすべて失うことになる、まさにリスクの大きなギャンブルだったのです。

 こうした危険から船主を守るために発明されたのが株式会社の仕組みです。

 危険が伴う航海に際し、大勢の出資者を募り、費用を負担してもらうことで一人ひとりのリスクをできるだけ小さくするとともに、航海の成功によって得られたリターンも出資額に応じて受け取ることができるという仕組みです。こうすることで船主はリターンを独り占めすることはできませんが1人で資金を用意するよりも大きな資金を手にできるため、航海の規模や回数も増やすことができます。

 まさに現在の株式会社、株式投資と同じ考え方です。物理的には同じ船に乗らないけれども、自分のお金を出すことで相応のリスクを負い、そのリターンも相応に得ることができるという点では、ここまで説明してきたエンジェル投資に近いものがあります。

 若い会社の成長を支えていくためには投資の総量を増やしていく必要があります。日本のスタートアップ投資の規模はようやく1兆円が見えてきたところですが、米国は何十兆円というレベルにあります。