東日本大震災から4カ月後の2011年7月には、TOMODACHIプログラムとして「ハワイ・レインボーキッズ・プロジェクト」が実施され、被災した22名の日本の子どもたちがハワイを訪れた。2012年には、米日カウンシル・ジャパンと在日米国大使館が主導し、日米で次世代リーダーを育成するTOMODACHIイニシアチブが生まれた。

 当時、小学生としてハワイを訪れた成澤みくさんは、その後ハワイ大学で学び、東北大学大学院で海洋環境人類学や環境倫理などを研究している。2024年4月には、一般社団法人ODYSSEYを立ち上げ、TOMODACHI Kibou for Maui Programの運営を支えている。13年という長い時を経て、ハワイと日本が育んだ絆を象徴する事例である。

国を超えて体験を共有
真に持続可能な自然災害対策を

 TOMODACHI Kibou for Maui Programでは、初回の2024年3月、マウイ島ラハイナの高校生11名が来日し、東北を訪れた。2カ月後の2024年5月には、マウイ市長を始めとする行政関係者、企業経営者やNPO代表他、現地のリーダー15名がKibou for Maui Leadership Delegationとして東北や東京を訪れ、関係者と交流している。

 5月のリーダー訪問では、宮城県東松山市にある被災した小学校跡地のハイテク野菜工場、福島県浪江町にある世界最大級の水素製造装置、福島県川俣町にある、京都西陣織の帯の製造工場からウェアラブルIoTに事業をシフトさせたメーカー他の視察や種々の意見交換会が行われた。

 マウイからの参加者は、主力の観光産業だけに依存せず、新たな事業を創造的に生み出すことが重要だと気づいたと言う。別の参加者は、経済的支援に加え、次世代や将来を見据えた長期的投資を行うべきだと述べている。

 被災直後は即座に解決すべき課題が多く、その重要性は言うまでもない。さらに時を経るにつれ、将来に向けて中長期的な復興を構想し、それを支える人材の育成が必要になる。東日本大震災や能登半島地震の例に限らず、規模の大小を問わず、日本各地で発生する自然災害からの復興も同様であろう。

 TOMODACHI Kibou for Maui Programでは、今年7月にもハワイの高校生が日本を訪れている。壊滅的な被害を受けた地域の人々が、国を超えて体験を共有し、深い共感と連帯、推進力が生まれていることに未来への希望を感じる。

ハワイ・マウイ島大火災の「爪痕」を現地レポート、日本の震災復興体験が現地にもたらしていた“光”とは2024年5月のKibou for Maui Leadership Delegation参加者

(早稲田大学ビジネススクール[早稲田大学大学院経営管理研究科]教授 川上智子)