今期に入ってからの3社の動向も、ほぼ同様の傾向が続く。ヤマトの4~6月の取扱個数はほぼ前年同期並み(約3500増)の5億5091万個。内訳は宅急便・宅急便コンパクト・EAZYの3商品は2.0%増だったが、日本郵便への委託が進む投函型サービス(ネコポス・クロネコゆうパケット)が8.2%減となったことが響いた。

 佐川の飛脚宅配便の4~6月実績は、3.4%減の3億1800万個で、依然として低調に推移している。

 一方、日本郵便の実績は5月までの2カ月分ながら、ゆうパックが2.6%増の8380万個、ゆうパケットが16.7%増の8355万個となっており好調を維持。とくに投函型サービスのゆうパケットについては、佐川、ヤマト両社からの委託が進んでいることから、2桁増の高い伸びを見せている。

 今期の3社合計の取扱個数については、各社とも下期以降の需要回復を見込んでいるものの、個人消費の回復が遅れているとの観測もあることから、年度トータルでは小幅な伸びにとどまりそうだ。

3社とも得意分野にリソース集中へ
ヤマトは構造改革でコストを適正化

 そうした中で、今後の3社の事業戦略を見ていくと、それぞれの得意分野に経営資源を集中化していく動きに拍車がかかっていきそうだ。

 日本郵便は、郵便ネットワークの強みを活かせる薄物小物の投函型サービスであるゆうパケットをさらに強化していく。日本郵政グループの改訂計画である「JPビジョン2025+」では、ゆうパケットの取扱個数、収益を25年度までに23年度比で倍増(807億円→1600億円、4.6億個→9.7億個)させる野心的な目標を掲げた。

図表2:日本郵便の収益目標日本郵便はゆうパケットの倍増を目指す
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 ゆうパックの取扱個数についても、23年度の5億5000万個から25年度に6億2000万個まで増やす計画だが、佐川とヤマトからの委託が進み、事実上の独占サービスとなったゆうパケットを郵便・物流事業における成長エンジンに明確に位置づけた格好だ。

 一方のヤマト運輸は、単価が低い投函型サービスを日本郵便に委託したことで、通常の宅急便を中心とした“箱の荷物”にリソースを集中していく。すでに一部で成果が出始めており、4~6月期の同社の取扱個数は全体では前年並みだが、宅急便・宅急便コンパクト・EAZYの3商品に限るとプラスに転じており、下期以降さらなる取り扱いの拡大を図っていく。

 その戦略のひとつとなるのが法人ビジネス領域の開拓。サプライチェーンの上流工程から顧客のソリューションパートナーになることで、そこから発生する宅配需要を取り込んでいく。また、全国に最大4000カ所あった宅急便営業所を今後数年で約1800カ所まで集約するなどネットワーク・オペレーション構造改革を進め、コストを適正化していく(24年3月期末では2915カ所)。

 佐川急便は、本来の得意分野であるB to B小口荷物に注力していくとともに、同社がTMSと呼ぶ宅配便以外の輸送サービスを拡大していく。また、以前から「個数より単価」の戦略を掲げており、むやみに数量を追うことなく、着実に単価水準を高めている。

 今後はハブとなる中継センターを新設することで、ネットワークとしての輸送キャパシティを高めるとともに、運行便の集約による幹線運行の効率化を進める。26年2月に東京都江東区に「東京中継センター」、同年7月に兵庫県尼崎市に「関西中継センター」を新設。東西2カ所に大型中継センターを整備することで、今後の取扱数量の増加にも対応できる持続的な輸送インフラを構築していく。