ヤマト、佐川が「置き配」解禁
「参入障壁が下がる」リスク指摘も

「2024年問題」の解決策のひとつとして、社会的な関心も高い宅配便の再配達削減。その有力な手段のひとつとして「置き配」に対するニーズが高まっている。これまでは大手ECが自社配達する際の手法として導入してきたものの、宅配大手では一部を除いて正式には導入されていなかった。

 しかし、ヤマト運輸は24年6月、クロネコメンバーズの会員を対象に宅急便、宅急便コンパクトの受け取り方法に「置き配」を追加。また、佐川急便も9月からスマートクラブの会員やLINE公式アカウントを通じて「置き配」を選択できるようにすることを決めた。

 この事実上の“解禁”は、「置き配」に対する認知度向上や社会的なニーズの高まりを背景に、社会課題を解決する一環として受け取り利便性の向上を図ったものだが、一方で、宅配事業者としての事業戦略上のリスクを指摘する声もある。そのひとつが今回、ヤマト、佐川という最大手2社が“解禁”したことで、宅配便サービスのデファクトスタンダードが「対面受け取り」から「置き配」に移り、参入障壁が下がるというものだ。また、その結果としてサービスの低下を招き、単価下落につながりかねないという指摘も出ている。

 さらに、盗難などのリスクへの対応が難しいという指摘もある。ある関係者は「EC企業の場合は、自社で配達した荷物が盗難被害にあったとしても社内事故で処理できる。もとより、一定の率で何らかのアクシデントが起きることは想定の範囲内。しかし、“運び届けること”を仕事としている宅配事業者が預かった荷物を盗難された場合、顧客への説明や調査などにかなりの時間や労力が割かれる」という。

「置き配」の“解禁”は時代の流れではあるものの、今後の宅配サービスのあり方が変化していく可能性も孕んでいると言えそうだ。

物流の専門紙 カーゴニュース http://cargo-news.co.jp/