正解:B社に投資したほうが良い

株を買う前に自己資本比率をチェック

 B社は自己資本比率が36%で財務的に問題なく、高配当利回り株として長期投資していって良いと判断できます。

 一方、A社は自己資本比率が11%と低く、財務面で見劣りするので、投資は避けたほうが無難だと思います。

B社は中部電力と似た内容のバランスシート

 2024年5月時点で筆者が投資して良いと判断する電力会社は、中部電力(証券コード9502)のみ。収益力と財務内容を総合的に評価して選別しています。

 非稼働原発を抱える電力各社の財務は傷み、中部電力以外は連結自己資本比率が10~30%に低下。3割を超えているのは中部電力の36.4%(2024年3月末)だけです。

 日本では、エネルギー価格の急騰によって、2022年3月期と2023年3月期に電力産業が巨額の赤字を計上しました。これは日本特有の現象です。

 日本以外の国では、電力インフラを守るため、燃料価格が上昇した時は速やかに電力料金の引き上げを認め、電力産業の財務が傷まないようにしています。

 ところが日本では、コストアップに料金の引き上げが追い付かず、電力産業が巨額の赤字を計上しました。

 日本にも「燃料費調整制度」があり、通常だと料金の引き上げが遅れて実現し、翌期の大幅な黒字で利益を取り返すことができます。

 ところが、日本では利益を完全には取り戻すことができません。

 原因は2つあります。

 まず個人向けの規制料金に上限価格があること。上限を超えて燃料価格が高騰すると電力料金に転嫁できずに、電力産業の負担となります。

 さらに、日本卸電力取引所での電気の市場価格が急騰したことも、電力各社の負担となりました。燃料費調整制度が、卸電力の高騰を考慮して調整される仕組みになっていなかったからです。

 規制緩和で新規参入した電力事業者の中には、これが原因で破綻したところもありました。

(本稿は、『株トレ ファンダメンタルズ編』から抜粋・編集したものです。)