ある事情から、昨今のゼネコン業界はシニア社員にとても優しい。例えば、中高年の給料が激減するような役職定年制度を持つゼネコンは少ない。さらに大成建設では、条件を満たせば70歳まで働けるという。一方、不動産会社はどうなのか?特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』(全17回)の#16では、ゼネコンがシニア社員に優しい事情を詳述する。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
歯止めがかからぬ人手不足と高齢化
シニアに優しい建設業界
人手不足と高齢化――。建設業界を語る上で、この話は避けては通れない。国土交通省の調べによれば、1997年に建設業界の就業数は約685万人となりピークを迎えたが、その後は減少の一途。2020年には492万人となって500万人を割り込み、実にピーク時の約3割減となっている。
就業人数が減る一方で、高齢化にも歯止めがかからない。建設業に占める55歳以上の割合が3割を超えてからすでに10年以上が経過しているが、現在では36%を占める。なんと、建設業従事者の3人に1人が、55歳以上というわけだ。片や、29歳以下は約1割でしかなく、かなり高齢層に偏った業界といっても過言ではない。
そこには、公共工事の減少などで長らく建設投資が減ったことに加え、労働環境の厳しさなどから若者の「建設離れ」が進んだことが挙げられる。むろん、これは下請けや孫請けなど現場を含めた建設業全体の話であり、その頂点に君臨するスーパーゼネコンの置かれた状況は少々異なるが、他業界と同様に氷河期世代や若手が少ないことに違いはない。
しかも、アベノミクス以降、東京オリンピックなどもあって、ここしばらく建設業界は建設ラッシュに沸いてきた。故に、人手不足はさらに深刻度を増している。そうした中で、ゼネコンに役職定年制度はあるのだろうか。
役職定年制度といえば、一定の職位や年齢になると職を解かれ、部下がいなくなる制度のことで、多くは給料が激減してしまうことをいう。そこで、下図をご覧いただきたい。
本特集の#3『「シニアの給料激減制」を大企業の7割が採用!独自アンケートで判明した“役職定年”の全貌』で示した通り、従業員101人以上の企業で半数以上が役職定年制度を導入し、201人以上の会社での採用率は6割にもなる。ところが、建設業界に限ってみれば、「現在導入されているまたは過去に導入されていた」の割合は3割弱でしかない。
人手不足の深刻さの度合いが高い建設業界だけに、他業界に比べて役職定年制度が少ないことが如実に表れている。では、鹿島や大成建設、大林組、清水建設といったスーパーゼネコンたちのシニア事情はどうなっているのか。総じてシニアに優しい制度となっているが、役職定年制度の有無や定年の延長、再雇用の条件などで違いのあることが分かった。次ページ以降で年齢、役職、年収などを具体的に詳述していこう。