「俺がいないと会社が立ちゆかない」
は思いあがり

 ところが、現実はその逆。上手に使いこなすはずのマシンにあべこべに人間が支配され、部品の歯車にされているからです。パソコンの前に一日中座り続ける会社員、歩きながら食事をしながらいっときもスマホを手放さない若者たち。まさにパソコン中毒、スマホ中毒です。

 その画面から出るブルーライトを長時間見続けると、目に不調をきたすばかりか、重度の肩こり、睡眠障害、時には脳に悪影響を及ぼすことがあると聞きます。夜、ブルーライトを浴びると体内時計が乱れて不眠になる。不眠になると自律神経のバランスが崩れ、突然身体が震えだす。怖くて電車に乗れなくなったり、信号が青になっても横断歩道を渡ることができなくなったりしてしまうこともある。

 このような症状が出たら要注意。知らないうちにブルーライトに侵されているのかもしれません。パソコン、スマホと距離を置くべきです。これはパソコン、スマホによる現代病の1つです。

 会社に対する考え方も改めたほうがいいでしょう。会社は毎年新入社員を食べて、老社員を排泄し成長していく怪物。社員がいくら会社のために私生活や家庭を犠牲にして働いても、相手はバケモノです。感謝の気持ちなど微塵もありません。社員が血と汗で稼いだ利益を容赦なく吸い上げるだけです。

【美輪明宏には見える】働く人を不幸にする「バケモノ」の正体とは私の人生論 目に見えるものは見なさんな』(毎日新聞出版)美輪明宏 著

 また、どこのオフィスにも「俺がいないと会社が立ちゆかなくなる」などと1日も休まず出社するオッサン社員がいますが、それは大間違いです。会社は誰がいなくなっても勝手に動いていくもの。たとえそれが役員や社長でもです。

 安倍政権の掲げる「働き方改革」には、「長時間労働の是正」「子育て、介護と仕事の両立」など高邁な理想がいくつも掲げられています。それがどこまで実現できるかは、明確なルール化と企業側の柔軟な対応によるでしょう。大切なのは今こそ「人間らしい生き方」を見つめ直すこと。「働く側」の意識改革も必要なのではないでしょうか。

(初出:スポーツニッポン2016年12月3日付)

*大手広告代理店の新入社員が過労自殺…2015年、広告大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が長時間労働やパワハラを苦に自殺。電通は遺族に解決金を支払うとともに18項目の再発防止策を取ることに合意した。