物流大戦#9Photo:PIXTA

トラック運転手の年収はかつて1000万円を優に超え、若者が手っ取り早く大金を手にする常とう手段だった。残業時間の上限規制で完全に昔話となってしまったが、深刻化する人手不足で給料が上向く兆しもある。特集『物流大戦』の#9では、「2024年問題」で激変するトラック運転手の最新給与事情を調べた。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

かつては年収1000万も今は?
トラック運転手の給与相場を予想

 トラック運転手は、稼げる仕事の代表格だった。長時間・長距離運転をこなせる気合と根性さえあれば、かつて年収1000万円は軽く超えたとされる。

 実際、一財産築きたい若者が、何人も運送会社の門をたたいた。「焼肉の和民」などを展開する大手外食チェーン、ワタミ創業者の渡邉美樹会長兼社長CEOが、佐川急便のトラック運転手として昼夜問わず働き、創業資金を稼いだことは有名な話だ。

 SBSホールディングスの鎌田正彦社長も高校卒業後に上京し、佐川急便のトラック運転手として就職。留学資金を稼ぐため「半年ぐらい働いてお金ためて辞めようと思っていた」と語っている(本特集#2『ヤマトと佐川の牙城を崩せ!佐川出身「異能の経営者」SBS鎌田社長が目論む、1兆円企業への勝算』参照)。

 だが今、トラック運転手に対して、稼げる仕事だというイメージを持つ若者はほとんどいないだろう。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、大型トラック運転手の平均年収は約485万円、中小型トラック運転手は約437万円であり、際立って高いわけではない。

 そんな中、自動車運転業務の時間外労働の上限を年間960時間に制限する新たな規制、いわゆる「2024年問題」がスタートした。運送会社は新規制への対応を進めており、トラック運転手にとっては残業が制限されるため、給与に直接影響する事態になっている。

 では今後、トラック運転手の給与事情はどのように変化するのか。次ページでは、最新の給与相場を実額で公開するとともに、トラック運転手の転職サイトとしてシェアトップのドラEVERが実施したアンケート結果などから、今後の給与動向を予想した。