物流大戦#15Photo:PIXTA

2024年4月、ヤマト運輸が自社の貨物専用機の運航を開始した。さらに日本貨物鉄道(JR貨物)の貨物新幹線構想など、鉄道や船舶を活用するモーダルシフトへの模索が始まっている。今後はトラック運転手の確保が難しく、環境負荷の低減などが求められるからだ。特集『物流大戦』#15では、トラックに依存する物流業界で、本当にモーダルシフトが進むのかを調査する。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

鉄道&内航船の輸送量倍増を目指すも
モーダルシフトが進まない実態とは

「政府の方針通りに現状の積載量70%を倍にすると140%になる。今の輸送力だけではとても賄い切れない」

 そう述べるのは、日本貨物鉄道(JR貨物)鉄道ロジスティクス本部営業部の和田智秀担当部長だ。2023年10月に政府が公表した「物流革新緊急パッケージ」では鉄道と内航海運の輸送量を今後約10年間で倍増させる目標が打ち出された。

 トラック運転手の残業時間が規制される「2024年問題」を皮切りに、物流業界で検討されているのがモーダルシフトだ。トラックなどの自動車で行われる貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用に転換することを指すが、実態としてトラック以外の輸送量は大きく増えていない。

 例えばJR貨物の輸送量は過去4年間にわたって2600万トン台を推移したままで、鉄道へのシフトは進んでいない。新幹線を貨物として利用する構想もあるが、まだ構想段階にすぎない。

 “空”の活用も本格化している。24年4月、ヤマトホールディングス(HD)が日本航空(JAL)と提携を結び、自社の貨物専用機の運行を始めた。

 だが、いずれの輸送手段にもメリット・デメリットがあり、輸送量を増やそうとしても簡単には増やせない“事情”がある。それは一体何か。

 政府がモーダルシフトの方針を定めたことによって、これまでほとんど変化してこなかった陸海空の覇者が重い腰を上げ始めた。次ページでは、トラックから他の輸送手段へ意識が変わりつつある物流業界のモーダルシフトの実態を明らかにする。