PRはPublic Relationsの略であり、究極の目的はすべてのステークホルダーを自社のファンにすることにある。しかし残念ながら、いまだにPRや広報は売上を伸ばすための手段、広告の一種と理解されるケースも少なくない。書籍『経営にPRを』では、中小企業の経営に本来のPRの視点を取り込み、「広報の自走化」で情報発信力を高めることの重要性について解説している。

広告とPRはどこが違うのか<PR>photo AC

広告の目的は短期間での売上アップ

「社員のファンづくり」に取り組むにあたっては、広告とPRの違いをよく理解しておく必要があります。

 しかし、広告とPRはどう違うのか、質問しても答えられない人がほとんどです。広告と似た言葉には「宣伝」もあります。「広告」「宣伝」と「PR」の違いを確認してみましょう。

 まず、広告はAdvertisingという英語の訳で、語源は「振り向かせる」「注意させる」というラテン語です。

 現代社会において広告は、主に企業がテレビ・新聞・雑誌などのマスメディアから広告枠を買い取り、そこで自社の商品やサービスを紹介するコンテンツを掲載、放映して、ターゲットとする顧客に働きかけるために行います。

 その目的は、商品やサービスの売上アップに結びつけることです。それも、1年後とか2年後のことではなく、媒体によって差はありますが、少なくとも数週間から数カ月以内の売上アップを目指します。

 マスメディアの広告枠はかなり高額であり、従来は大手や中堅クラスの企業が主に利用してきました。ただ、現在は、パソコンやスマホの画面上にその人の関心に応じた広告を表示するターゲティング広告が広がっています。こちらはクリック課金などの仕組みで中小企業でも容易に行えます。

 次に、「宣伝」はラテン語のPropagandaの訳で、発信者が伝えたい情報を広く届け、理解を得ようとすることとされます。日本語では否定的なニュアンスが強く、「あれは会社の宣伝だよ」などと使われがちです。

 いずれにしろ、広告も宣伝も企業が商品やサービスの販売促進を図るためのマーケティング活動であり、基本的には企業側からの一方通行の情報発信です。

PRの目的は中長期的なファンづくり

 これに対しPRは、Public Relationsの略で、日本語では「広報」と訳され、「社会との関係づくり」という意味です。

 対象となるのは社外の取引先や株主、地域社会や行政のほか、社内の社員やその家族も含まれます。PRはこうしたステークホルダー(利害関係者)との間で中長期的に良好な関係を構築・維持・発展させていくことが目的です。

 PRは販売促進やマーケティングとは直接、関係はありません。また、一方的に発信者側が伝えたい情報を発信する広告や宣伝とは異なり、相手にとって興味や関心のある情報を扱おうとする点も異なります。PRのほうが、双方向のコミュニケーションをより強く意識しているといえるでしょう。