中小企業にとっての広告

 視点を変えて、中小企業にとって広告とPRがどのようなものなのか考えてみましょう。

 従来、広告といえばテレビやラジオのCM、新聞や雑誌の広告欄(ページ)、そのほか看板やチラシを指しました。

 特に、テレビやラジオのCM、新聞や雑誌の広告欄(ページ)はそれこそ数百万円単位の費用がかかり、中小企業にとってはなかなか手が出せませんでした。また、実施したとしても、かけたコストに見合うリターンは期待できなかったでしょう。

 広告はどちらかといえば大企業、それも一般消費者をターゲットにした、B to C型ビジネスを行う企業が利用するものでした。

 もちろん、現在はインターネットを通じたターゲティング広告が普及し、ネット通販を中心に中小企業であっても積極的に活用するケースが増えています。

 ただ、昔もいまも広告の主な狙いは、短期的に顧客の認知を獲得し、購買につなげることです。

PRは低リスクでハイリターンの発信手段

 これに対し、中小企業におけるPRの理解と活用はまだまだ進んでいません。

 私の会社は中小企業向けにPR支援を行っていますが、契約していただくクライアント企業の大多数は、自社の商品・サービスがメディアに取り上げられ、認知度を上げて売上を増やしていきたいと考えています。

 当然その気持ちはわかります。メディアに取り上げられるメリットは私もまったく否定しませんし、実際、メディアに取り上げられるためのノウハウやメディアとの接点づくりのお手伝いをしています。

 ただ、問題はそこからです。テレビに取り上げられたり、新聞・雑誌に掲載されたりしたからといって、売上が本当に上がるのでしょうか。

 たとえば、楽天やAmazonで1万円以下のグッズを扱っているような企業であれば、数日から数週間、売上が跳ね上がることは珍しくありません。飲食店もそうです。リポーターが「最高に美味しい」と言えば、翌日から間違いなく行列ができます。

 ただ、それは一過性であることを忘れてはなりません。消費財や食べ物については人それぞれ好みがあります。ある人にとっては「最高」でも、ほかの人にとっては「それほどでもない」かもしれません。人気店・人気商品・人気メニューとして売れ続けるかどうかは別の問題です。また、飲食店で味がどんなに美味しくても、接客が悪ければ二度と行かないと思います。逆に、社員が会社のファンとなり、お客様に対して気持ちのいい接客をすればリピートにもつながります。つまり、社員のファンづくりは会社の利益を押し上げるのです。

 それより重要なのは、PRは第三者からの情報発信だということです。いまの消費者は、広告は企業が費用を負担し、自分たちが伝えたい情報を一方的に発信しているということを明確に認識しています。基本的に「どうせ広告でしょ」と思っているのです。

 それに対し、テレビや新聞など公益性の高いマスメディアが自分たちで取材し、編集して伝える情報の信頼度はかなり高いといえます。ただし、メディア掲載においては企業側から情報の内容をコントロールできません。伝えてほしいことを伝えてもらえる確証はなく、省略されたり変更されたりすることもあります。

 それでも、高額になりやすい広告と比べ、PRではプレスリリースの作成・配信にかかる費用以外に基本的に高額なコストはかかりません。その点においては、費用対効果が非常に高くなります。中小企業にとってのPRは、低リスクでハイリターンな情報発信の手段だといえます。

広告とPRはどこが違うのか〈PR〉