グリップ性能抜群の
「Sタイヤ」とは?

 たとえばスポーツタイプのタイヤは、騒音・乗り心地・燃費などを犠牲にしていますが、その代わりにコーナリングや発進時、ブレーキング時の性能を向上させています。その最たる製品が「Sタイヤ」と呼ばれるものです。

 Sタイヤはいわゆるセミレーシングタイヤです。サーキット走行用の溝のないタイヤ(スリックタイヤ)で公道を走ることは禁止されていますが、Sタイヤはこれに「ぎりぎり公道使用ができる程度の溝」を掘ったものです。

 一般的なタイヤとは異なり、摩擦の熱でタイヤ表面を溶かして走るため、非常に高いグリップ力を得られます。 ただし、寿命は短くなってしまいます。

「クルマの音がうるさい」「燃費が悪い」→もしかしてタイヤのせい!?専門家が教える、実は奥深いタイヤ選びの世界「楽天市場」で売られている、溝のあまりない「Sタイヤ」の例(出典:楽天市場

 身近なところでは、スタッドレスタイヤもリプレイスタイヤの一種です。ご存じの通り、乾燥路面でのグリップ力や騒音などをある程度犠牲にする代わりに、雪道や凍結路面の走行性能に特化させています。

 ただもちろん、リプレイスタイヤはそんな極端なタイヤばかりではありません。総合性能を重視したタイヤもたくさん存在しています。

 一般的なリプレイスタイヤに求められる性能についてアンケートを行うと、必ずといっていいほど上位になるのが「ウエットブレーキ性能」と「燃費性能」です。

 言い換えると、多くの人が「雨の日のブレーキ性能」と「ガソリンの消費を抑えて効率よく走る性能」を求めているのです。タイヤメーカーもそれを承知していて、リプレイスタイヤの改良を重ねています。

 なお、タイヤの業界団体である日本自動車タイヤ協会(JATMA)ではラベリング制度を実施していて、タイヤのウエットブレーキ性能と転がり抵抗係数(燃費性能に大きく影響する)について公表しています。

 一般ドライバーにとって、このラベリング制度の嬉しいところは、タイヤの銘柄だけでなく各銘柄のサイズ違いについても網羅していることです。転がり抵抗係数についてはAAA、AA、A、B、Cの5段階等級。ウエットブレーキ性能についてはa、b、c、dの4段階で評価されています。

 その中で、転がり抵抗等級がA以上、かつウエットブレーキ性能がd以上(d未満のものは公表されていない)のタイヤについては「低燃費タイヤ」というラベルが付けられ、カタログなどで確認できるようになっています。