「末期の大腸がん」が主治医を信じて手遅れに…セカンドオピニオンのハードルはなぜ高いのか?静岡県立静岡がんセンター乳腺外科部長
西村誠一郎氏

 医師は患者からセカンドオピニオンを希望されると不機嫌になるのだろうか。全国で13カ所指定されている「がん医療中核拠点病院」の一つ、静岡県立静岡がんセンターの乳腺外科医・西村誠一郎氏に尋ねると、次のような答えが返ってきた。

「不機嫌にはなりません。患者さんの権利ですから。私は『標準治療』では治し切れないかもしれない悩ましい症例では、セカンドオピニオンを勧めています。標準治療とは、現時点で最も効果が期待でき、安全性が確立された一番よい治療ではありますが、必ずしも正解とは限りません。そういうときはこちらから『受けますか』と提案します」

 もっとも、そのような場合、静岡がんセンターでは、キャンサーボードと言って複数の専門医が診療方針を話し合う症例検討会がもたれるのが普通なので、それが“院内セカンドオピニオン”の役割を果たしている。

セカンドオピニオンに対して
ネガティブな医師は多いのか

 では、セカンドオピニオンについて、ネガティブな感情を抱く医師は本当にいないのだろうか。

「自分の診療にプライドを持っている先生は反対しがちですね。ですが医療と言うのは不確実性があるもの。100%の保証はないので、患者さん本人が納得して治療を選択できるよう手を尽くすべきです」

 実際、西村氏も、セカンドオピニオンで「主治医の詰めの甘さ」を指摘せざるを得ないケースは少なくない。たとえばファーストオピニオンで「腋窩リンパ節転移」と診断され、リンパ節を切除する手術が必要と言われたケース。画像診断を読影した限りでは、ほぼ黒(転移)で間違いない症例だが、一定数白(転移なし)が含まれているという。

 かつては乳がんの手術時に、リンパ節郭清を行うのは一般的だったが、リンパ節にがんの転移がない場合には切除しても意味がないうえ、腕が上がらない、しびれやむくみが出るといった後遺症の原因になる。