居眠り運転の車に追突されて愛車が大破→修理を頼んだディーラーに言われた「納得できない一言」写真はイメージです 筆者提供写真

シンプルで大規模な「レモンの原理」が
ビッグモーター事件

 レモン市場の研究でその名を経済学界にとどろかせたのは、カリフォルニア大学バークレー校教授ジョージ・アカロフ(1940~)でした。アカロフはスティグリッツとともに「情報の非対称性」の研究で2001年ノーベル経済学賞を受賞しています。

 もっとシンプルで大規模な「レモンの原理」が現れたのが、ビッグモーター事件です。なにしろ、事故車を持ち込まれたビッグモーター社が、さらに車体を傷つけて保険会社向けに費用を算出していたのですから、レモンに注射で毒物を注入して腐敗の程度を悪化させ、過大な治療費を請求していたようなものです。おまけに、その保険会社はビッグモーターから自賠責保険などの扱いで恩恵を受け、出向者まで送っていたそうですから、グルだったとは言いませんが、見ないふりをしていたか、全く疑いもしなかったのでしょう。

 ちなみに。ビッグモーターの保険金水増し件数は約6万5000件もあり、請求額を確定できたのは2.6%の1700件しかないそうです。正しい価格の再調査について、ビッグモーターの存続会社はこの7月に「全件調査は不可能なので打ち切る」と保険会社に通告しています。今後は裁判所の個々の調停で、ということのようです。被害総額の確定なんかできそうもありません※注2。