2017年に「数年の延期」を発表し、2018年に改めて「2023年度末」のサービス開始を掲げたが、その間に新型コロナウイルスのパンデミックが発生。2022年にはコロナ禍の影響で世界的な半導体不足が発生し、車両の製造が遅れているとして「少なくとも1年程度」の延期を発表した。
また2018年には、普通車1両にバリアフリー対応のトイレを設置すると発表し、2019年から2023年にかけて改修を行っている。
JR東日本はサービス向上のためと説明したが、問題はバリアフリー非対応のトイレを備えるグリーン車にあったのではないかとの見方がある。バリアフリー法の基準を定める省令には「便所を設ける場合は、そのうち一列車ごとに一以上は、車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のものでなければならない」との規定があるからだ。
グリーン車導入の投資は
10年程度で回収可能
さまざまな想定外のうち、最大のものがコロナ禍だろう。首都圏屈指の混雑路線と知られる中央線だが、朝ラッシュピーク時の平均混雑率は2019年の183%から2020年は116%に低下した。これでは2両増結の必要はなかったと思われたが、2023年は158%まで回復。2024年はもう一段増えていると思われる。
国交省は「大都市圏における都市鉄道のすべての区間のそれぞれの混雑率を150%以内とする」ことを目標に掲げており、結果的には「ちょうどよい」混雑率に収まったというべきか。
採算性も問題なさそうだ。JR東日本はグリーン車導入に関係する投資額を860億円としているが、大半は前述の設備改修によるもの。グリーン車1両を2億円と仮定すると、116両の車両新造費用は250億円程度だ。年間80億円の増収を見込んでおり、地上設備の改修を含めても10年程度で回収できる。