「あなたの組織には、職場と自宅以外で働く選択肢がありますか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「働く場所を制限する職場」の問題点について指摘します。
サードプレイスを活用する組織
日本の企業においても、テレワーク・リモートワークなど職場以外の場所で勤務する働き方が一定の広がりを見せてきている。自宅や帰省先などに限定せず、コワーキングスペースや宿泊施設などでの勤務をよしとする企業もある。
勤務先でも自宅でもない第三の場所を「サードプレイス」と呼ぶ。タレントマネジメントシステムを運用・提供している株式会社カオナビのサイトによると、その定義は次の通り。
サードプレイスを活用して普段と景色を変えることで、個人の作業に集中できる。あるいは発想や構想に集中できる。複数名でサードプレイスを活用する場合、日常の仕事を忘れ、カジュアルな雰囲気でグループワークやアイデア出しが捗る。このように、さまざまなメリットがある。
偶然の出会いも誘発される
サードプレイスを活用するメリットはそれだけではない。社外の人たちとの偶然の出会いが生まれ、そこから共創に発展することがある。
・若手社員を集めたグループワークをしていたら、隣の部屋に他社の若手社員が複数名いて意気投合し、交流することに
・新規事業を検討するミーティングをしていたところ、顧客ターゲットとなり得る層の人たちがそこにいてさっそく意見を聞くことに
このような出会いは珍しくない。筆者も何度も体験したことがある(もっとも印象的なのは、奥浜名湖沿いの無人駅で「写真を撮ってください」とお願いした人がたまたま地域の経営者協会の理事。そこから雑談が弾み、その流れで講演の仕事を依頼された)。
ナレッジワーカー(知的生産物の創造に携わるビジネスパーソン)はもっと外に出たほうがいい。
事業所か自宅で勤務し、外出と言えばたまに社外の展示会やイベントに参加する程度。それで新たなアイデアや柔軟な発想が生まれるだろうか。能力や意欲を持つ外の人と出会えるだろうか。
現場管理や情報漏洩リスクなどの観点から、会社と自宅以外で働くことを禁止する企業も少なくない。
しかし先述のようにサードプレイスには、内向きの体質を変え、偶然の出会いをきっかけに社外との共創体質が生まれていく効果もある。イノベーションを起こしたいならどんどん外に出よう。