「あなたの職場では、なんでもかんでも口頭で済ませていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「なんでも口頭で伝える職場」の問題点について指摘します。

人が辞めていく「口論が絶えない職場」が報連相の際にやっていること・ワースト1なんでもかんでも口頭で済ませていないか?(イラスト:ナカオテッペイ)

なんでも口頭で伝え合う組織

 近場にいる相手とのコミュニケーションにおいて、口頭を好むか、テキスト(書き残した文字情報)を好むかには職場によって差が出る。

「いちいちメールやチャットで連絡してくるな」

「目の前にいるんだから、声をかければよいだろう」

「電話で話してしまった方が早い」

 このようなセリフが飛び交う職場は、口頭文化が優位と言える。

 口頭の伝達はとにかく手っ取り早い。その場限りの注意喚起や、目先の用件を処理するために当事者間で一時的に共有されればよい情報であれば、口頭の伝達のみでもよい。その場で伝えてしまえば、発信者はスッキリできる。受信者も待たされる時間が少なく、即座に情報を処理できるのでラクである。
 メールやチャットなどで作文するのは手間も時間もかかるため、口頭で伝える方がラクだと感じる人もいるだろう。

口頭の伝達が引き起こすトラブル

 一方で、口頭文化には弊害もある。

 ・伝達ミスや認識違いを誘発し「言った・言わない」のトラブルが起こる
 ・その場にいない第三者に伝わりにくく、伝達のコストと時間がかかる
 ・伝言ゲームの過程で、意図がねじ曲がって伝わってしまうこともある
 ・後になって参照や利活用ができない

 その情報を一定期間記憶しておいたり、場にいない第三者に伝えなければならないとしたら、受信者がコミュニケーションの手間やコスト、リスク(忘却、伝達ミスなど)をすべて背負うことになる。
 また口頭のみで伝えられた情報は風化しやすい。

 子どもの頃に楽しんだ「伝言ゲーム」。筆者は、口頭による伝達のリスクを知るための教育の意味があったのではないかとさえ思っている。
 口頭はその場ですぐ気持ちよくなるコミュニケーション。テキストは後になって泣かないためのコミュニケーション。そう言えるのではないか。

口頭文化=問題先送り体質!?

 口頭の情報伝達が主流の組織においては、当事者の休暇、異動、あるいは組織体制の変更など何らかの変化があったときに仕事を引き継ぐのにも苦労する。

 ・引き継げないから休めない
 ・毎年人事異動の時期になると、引き継ぎ資料の作成で異動者が最終日のギリギリまで深夜残業
 ・それでも十分な引き継ぎ資料を作成しきれず、異動後も後任者から問い合わせをされまくる
 ・問い合わせをされても覚えておらず答えられない

 あなたが所属する組織では、このような状況が常態化していないだろうか。

 口頭のみでの伝達はコミュニケーションの手間やコストの先送りともいえる。なんでもかんでも口頭で済ませて後でドタバタする組織は、問題先送り体質を疑ったほうがよい。