サンリオがハローキティにおいて取った同戦略のインパクトは大きく、例えば、最高益となった14年3月期の海外売上にしめるハローキティの構成比は93%に上っています(出典:株式会社サンリオ 2024年3月期決算説明会配布資料(中期経営計画))。

 実は、映画をはじめとするエンタテインメント業界では、いわゆる勝者総取り(winner takes it all)で、大ヒット作とそれ以外では収益性に大きな違いがあることが知られており、特定の作品に集中投資して大ヒットを狙うブロックバスター戦略が有効だとされています。

 一方で、ブロックバスター戦略にはヒットの当たりはずれ、ヒットの継続性といったリスクがあります。このことは資産運用の分野では、分散投資の重要性を伝える「卵を一つのかごに盛るな」ということわざに集約されています。

 サンリオの場合も、例外ではありませんでした。

 ハローキティへの関心は、2012年を境に徐々に薄れていったようです。これは、Googleでの検索数が12年を境に減少していることからも分かります(google trends調べ)。

 関心低下と時期を同じくして、最高益となった14年3月期以降、7期連続で売り上げと利益が減少し、減収減益に歯止めがかかりませんでした。そして2020年にはコロナの影響もあり、ついに営業赤字に転落してしまったのです。

「複数キャラ」戦略でV字回復
今後の成長の鍵は?

 売り上げ・利益ともに低迷に苦しんでいたサンリオですが、2020年に31歳で社長に就任した辻朋邦氏のもと、経営陣の若返りが図られました。そして、新しい経営陣のもと、ハローキティに集中していた「一極集中」状態からの脱却が進められたのです。

 結果、ハローキティへの依存度は、14年3月期の76%から直近の24年3月期には30%まで減少しています。

 また、各キャラクターの人気が分かるサンリオキャラクター大賞の総合順位の推移からも、ハローキティから他キャラクターへ人気が分散しつつあることがうかがえます。2000年代は圧倒的な強さを誇ったハローキティですが、直近では5位前後となっています。

キティ順位出典:サンリオキャラクター大賞ホームページ等より著者作成
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 アフターコロナで物販の売り上げが伸びたこと、国内外からのテーマパーク来場者が増えたこと、さらにライセンス事業の複数キャラクター戦略が功を奏し、サンリオは劇的なV字回復を果たしました。