デパ地下に、入荷即日完売となる人気の焼き菓子専門店があります。その名は「GALETTE au BURRE」。一見、海外ブランドかと見まがうこの店を仕掛けるのは、洋菓子の老舗「モロゾフ」です。ブランドとは、「商品とお客様の絆」とも言われる大切な看板ですが、それを“あえて隠す”という判断が、なぜ功を奏しているのでしょうか。現代ならではのブランドのつくり方を探ります。(グロービス ファカルティ・グループ・オフィス テクノベートFGナレッジリーダー 八尾麻理)
モロゾフは増収増益、不二家・ヒロタは減益
明暗分かれた要因とは?
矢野経済研究所が今年発表した調査では、2023年の国内の菓子・デザートの市場規模は前年比4.3%増の2兆3639億円(メーカー出荷ベース)と推定されています。
少子化による人口減少によって市場が縮小しても不思議ではない中、海外での日本の食や文化への関心の高まりから、菓子・デザート類の輸出が伸びていたり、インバウンド消費が下支えになっていたりして、市場全体はコロナ禍前の水準を上回るゆるやかな伸びを示しています。
しかしながら、業界全体としては円安の進行で輸入原材料の高騰が著しく、利益率を下げる要因となっている点は否めません。上場各社の直前期決算では、不二家が減収減益(23年12月期)、創業100年を迎えた洋菓子のヒロタが営業利益・経常利益ともに赤字(24年3月期)となるなど、老舗ブランドを中心に軒並み厳しい結果となりました。
そんな中、モロゾフは、直近4年連続で増収増益。営業利益率も、過去3年間は8%前後の好成績で推移しています。
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このように、老舗ブランドであっても、企業によって明暗が分かれているようです。いったいその差はどこから生まれたのでしょうか。