2人のビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

今回は、サプライチェーン連載の番外編。日本テレビ「スッキリ」で長年コメンテーターを務めた筆者が、新入社員を過剰に心配する大手企業の人事部長や、就活生を低賃金で働かせる「ブラックインターン」について考え、働く人にエールを送ります。(未来調達研究所 坂口孝則)

「今日は全く酔えないですよ」
人事部長が眠れない理由

 私が自動車メーカーで働いていた頃、給料が安いことに悩んでいた。そんな時、たまたま就業規則を読んでいると、ノーベル賞級の発見をした。「副業禁止」だそうだが、「本業を二つにしてはいけない」とは書かれていなかった。なるほど、じゃあ本業をもう一つ増やせばいい。

 そのようにして知人らと会社をつくってみた。20代後半のことだ。そして、その後はコンサルティング会社を設立して国内外を周ったり、日本テレビの朝の情報番組「スッキリ」で何年もコメンテーターをやらせてもらったり、人に呼ばれて講演をしたりするようになった。職業人生としては大手企業の勤め人、中小企業経営、フリーランス、とバランス良く(?)経験した。そのせいか、「就職」という行為に対していささか客観的に見ている。

「今日は全く酔えないですよ」

 今年の桜が咲いている頃、私は名古屋である大手企業の人事部長と食事をしていた。入社式を間近に控えた時期だ。氏は、新入社員が入社式に来てくれるか不安でどうしようもない、という。「そんな気持ち、初めてですか」と聞いた。「こんな気持ち、初めてさ」と安っぽいJ-POPの歌詞のような返事をしてくれた。

 氏とは仕事上よく会うのだが、ゴールデンウィークの後になると、「連休中に新入社員が友人に会って、他の職場の話を聞き入れて、辞めてしまわないだろうか」と心配していた。そして、夏の盆の後は「長い休みで地元に帰省した人も多いから、自社で働く意味を考えてしまって辞めないだろうか」と心配していた。

 私が思うに、働く意味を熟考して会社を辞めるのであれば、それは一人の若者の決断として尊重すべきだろう。ただ、現実問題、新入社員が早々に辞めてしまうと人事部の沽券に関わる。会社としては、そんなに簡単に辞めてもらっちゃ困る!がホンネだろう。

 この人事部長の心配は過剰だとしても、氏のような懸念を聞かされるケースがものすごく増えた。私は2000年前後の就職氷河期世代だが、隔世の感がある。もう1点、働く時間数もひと昔前に比べて減少している。異論はあるだろうが、非常に「良い社会」になりつつあるのだろう。