政治家の“AI音痴”許されるか
影響を正しく把握し方向づけるのが責務
明日27日に新しい自民党の総裁、つまり事実上の次の首相が決まる。
総裁選の過程では、経済政策でもさまざまな論争があったが、AI(人工知能)についての活発な議論が行われたとは言えない。
AIは世界の未来を決める極めて重要な技術だ。AIに関してどのような政策を取るかによって、人々の生活も、国の進路も大きく変わる。
だがAIの研究開発や活用の現状は、米国やその後を追う中国に大きく水をあけられている。例えば、AIによる自動運転車は、米国ではすでに商用化されているが、日本ではごく限定的な利用にとどまっている。この技術はバス、トラック、タクシーの運転手不足に悩む日本において大きな意味を持つはずだ。
つまり、技術によって労働力不足問題に対処することが可能なのである。それがこうした状態にとどまっているのは、何とも残念なことだ。
問題は、技術的なものだけではなく政治的なものも含んでいる。例えば、軍事技術への活用だ。この分野での無制限なAIの利用は認められるべきではないが、AIの活用が防衛費の膨張を抑制する可能性を無視してはならない。政治の立場からいえば、これは特に重要な論点だろう。
こうして政治的な決定のいかんによって、社会を構成するさまざまな集団が進む道筋は大きく異なるものとなりうる。だから政治の場でAIの議論が十分に行わなければならない。
AIが社会に与える影響を正しく把握し、どのような方向付けを行なうかは政治家に託された重大な責務だ。次期首相はその基本戦略を早急に示すべきだ。