経済学者が「ポスト岸田」に提言!自民党総裁選で誰が勝っても絶対やるべきことPhoto:PIXTA

自民党は岸田首相の後任を選ぶ総裁選挙を、9月12日に告示し27日に投開票を行う方針だと報じられた。立候補者の多さ、告示期間の長さ、共に異例の展開だという。国政がさまざまな課題を抱える中で、人口減少などに端を発して日本経済が「限界」を迎えていることは明らかである。人々の労働意欲を高め、企業の生産性を上げ、経済の持続的な回復を目指すにはどうしたらいいのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

「新卒一括採用、年功序列、終身雇用」
雇用3点セットはなぜ改革できないのか

 世界経済が大きく変貌を遂げる中、わが国の雇用慣行はなかなか変わらない。「新卒一括採用、年功序列、終身雇用」の雇用慣行は、かつて高度成長期には労働力の確保に相応の効果をもたらした。しかし現在、人口減少などわが国経済の「限界」は明らかである。必要な分野で必要な人材が働けるよう、労働市場を改革することが経済の活性化に欠かせない。

 欧米の主要国でも、古い雇用慣行のせいで経済成長が阻害されるケースがある。それに対して、1980年代の英国やオランダ、90年代以降のドイツは、いずれも痛みを伴う改革を進めて労働市場の流動性を高めた。その結果、人々の就業意欲は自律的に高まり企業の生産性が回復した例もある。

 雇用慣行を一朝一夕に改革するのは難しい。わが国の年金の仕組みは、旧来の雇用慣行を前提にしている。人々の労働意欲を高め、経済の持続的な回復を目指すにはどうしたらいいのか。リスキリング(学び直し)に加え、年金のポータビリティー制度を確立し、職を変える人が不利にならないようにすることが大切だ。つまり、労働市場だけでなく社会保障制度の改革も合わせて議論することが肝心なのである。