――着実に事業を広げてきたわけですね。
福田 ここまでは湘南エリアに特化していましたが、17年頃に転機が訪れました。法改正で、小さな不動産会社でも不動産の利活用のためのファンドを組成できるようになったのです。この「小規模不動産特定共同事業」に全国で初めて登録し、まちづくりファンドの組成を始めてから、各地の自治体や金融機関から声をかけていただけるようになり、全国各地でプロジェクトを手がけています。
――どんなプロジェクトですか?
福田 地域を活性化するには、「地域に関わる人を増やす」「地域に事業を増やす」「地域で循環するお金を増やす」の三つのサイクルを回していくことが必要です。このエコシステムを回せるよう、それぞれの領域のサポートを行っています。
例えば、事業者育成型公募はその一つ。遊休不動産をピックアップして、資金力はないけれども意欲のあるプレーヤーを公募して育成するプロジェクトを、自治体や金融機関と行います。静岡県三島市では地元事業者とタッグを組み、三島信用金庫さんにはメンターとして融資相談や収支計画作成の分野で参加いただいています。
またMINTO(民間都市開発推進)機構や地域金融機関と組んで、各地でまちづくりファンドを創設する事例もあります。信用金庫では神奈川県の湘南信用金庫さんや和歌山県のきのくに信用金庫さんなど、各地の信金さんに支援していただき、既に実績を上げています。きのくに信金さんとは和歌山県紀の川市の協力の下、弊社の社員を送り込んでエリアのリノベーション事業も行っています。
――各地で事業を展開されていますね。
福田 我々のプロジェクトは箱物を造って終わりという一過性のものではなく、地域の方を巻き込んで小さな事業を生み出していくしかけなので、自治体や金融機関から見て好意的に受け取られやすいようです。
ファンドに関しては、クラウドファンディングによる遊休不動産の再生・利活用プラットフォーム「ハロー!RENOVATION」を立ち上げ、こちらで出資者を広く募っています。
ファンドによっては優先・劣後構造を取っていて、一般投資家は利回り数%、プロ投資家には利回り十数%を得られるようにすることで、双方に出資するメリットを生み出しています。このプラットフォームが評価され、23年には国土交通省の「地域価値を共創する不動産業アワード」で大賞を受賞しました。
――今後のビジョンをお聞かせください。
福田 本当の意味での地域活性化、地方創生を実現したいと考えています。
そのために、お話しした取り組み以外にも、まちづくり人材を育てるためのスクールやプロの不動産事業者をネットワークする研究所など、人材育成の仕組みも構築してきました。現在は、物件の前でスマホをかざすだけで「どんな事業をすれば成功確率が高いか」をAIが判定するアプリを開発中です。
これらがまちづくりのインフラとなって、さまざまな地域を活性化できればうれしいですね。
また地域のプロジェクトにおいて、信金さんは事業者の紹介や、資金面や人材育成面での支援などご協力いただける領域が多く、キープレーヤーだと実感しています。今後はさらに多くの信金さんとタッグを組んでいければと考えています。
(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2024年10月号掲載)
従業員数:85人(パート・アルバイト含む)
売上高:9億円(2023年9月期)
所在地:神奈川県鎌倉市由比ガ浜1‐3-1-2階
電話:0467‐53‐8583
URL:enjoyworks.jp