チェックリストが事業成長の
足を引っ張っていないか
私はスマートフォンアプリのアップデート頻度から、その提供企業の社内プロセスを感じ取るときがあります。同じカテゴリーのスマホアプリでも、ある会社の更新頻度は2週間に1度なのに対し、別の会社は数カ月に1度しか更新していないといったケースはよく見られます。更新頻度が低い会社ではおそらく、チェックリストが肥大化していたり、社内の承認プロセスが複雑なのではないかと推察しています。
チェックリストは、リスクとのトレードオフという側面を持つことがあります。ビジネスではどこまでリスクを取れるか見極める必要があり、それがチェックリストに反映されるのです。ゼロリスク神話という言葉がありますが、企業はリスクを恐れるあまり、極めて遅い進みしかできなかったり、そもそも「進まない」という選択をしたりすることもあります。
事業のスピードを意識すれば、必然的にチェックリストは軽量化されるはずです。しかし、重厚長大なチェックリストを抱える企業・組織では、「事業スピードが遅いというリスク」を軽視している傾向が強くはないでしょうか。
私の登山の持ち物リストも、ビジネスのチェックリストと同様の問題を抱えています。一度ある山で不足していたものをリストに加えると、その後は削除されにくく、リストが肥大化しがちです。しかし本来は、登る山や時期によって必要な装備は異なるもの。登山後にリストを見直し、不要だったものや足りなかったものをチェックし、過去の経験を踏まえて次の持ち物をその都度決める必要があります。私は昨年からテント泊を始め、来年には山頂近くのテント場を目指したいと考えています。そのためには、さらに適切な持ち物を厳選し、無駄を省いた準備が必要になるでしょう。
ビジネスでも同様に、さらなる高みを目指すには適切なチェックリストの運用とリスク許容が必要です。すべてをリストに盛り込むのではなく、必要なチェックだけを行い、効率的に事業を進めていかなければ、最終的な目標には到達できないでしょう。適切なバランスを取りながら、柔軟かつ効果的にチェックリストを活用していくことが、事業成功への鍵となるのです
(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)