すばやい判断が求められる過酷な現場においては、チェックリストの正しい実践はさらに重要となります。

 例えば、救急医療をはじめとする医療現場。医師や看護師が短時間で必要な判断を行うために、心肺蘇生法やトリアージのガイドラインなど、シンプルかつ要点を抑えたチェックリストが存在しています。災害対応の現場でも、救援隊や指揮者は素早い判断が求められます。ここでのチェックリストも、状況に応じた最適な行動をとるために、必要最小限の情報に絞られたものが使用されます。

 こうした過酷な現場でのチェックリストのあり方や効用については、医師・ジャーナリストのアトゥール・ガワンデ氏が著した『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』(晋遊舎)で、豊富な事例を交えて紹介されています。ガワンデ氏は、WHO(世界保健機関)のプログラム「安全な手術が命を救う」チェックリスト実践マニュアルの作成を主導した人物です。

過酷な現場に学ぶ
チェックリスト5つのポイント

 一般のビジネスにおいても、こうしたすばやい判断が求められる仕事のチェックリストの使い方は応用できます。そのポイントは以下の通りです。

1. 最重要項目にフォーカスする

 チェックリストには、ビジネスで最も重要なタスクや判断基準を絞り込み、明確に記載する。無駄な情報を排除し、最も必要な要素だけを取り入れることで、迅速な判断が可能になる。

2. シンプルさを追求する

 複雑な手順や過剰な情報は避け、簡潔で直感的に理解できる形式にする。ビジネスの現場でも、シンプルなチェックリストが意思決定をスピードアップさせる。

3. 反復的な使用と改善

 一度作成したチェックリストを繰り返し使用し、経験を通じて改善していく。フィードバックを基にリストを洗練させ、使いやすさや効果を高めることができる。

4. 役割分担と責任の明確化

 チェックリストに、誰が何をするべきかを明確に記載することで、チームメンバー全員が自分の役割を理解し、スムーズに行動に移すことができる。これにより、ビジネスプロセス全体が効率化される。

5. タイムリーな見直し

 ビジネス環境の変化やプロジェクトの進捗に応じて、チェックリストを定期的に見直し、必要に応じて更新する。状況に合ったリストを維持することで、変化に迅速に対応できる。