ADAS、テレマティクス
「ホンダセンシング」の実用性は?

 標準装備のADAS「ホンダセンシング」はシビックe:HEVに続き自車線だけでなく両隣の車線も監視する新世代型。フロントをワイドビューカメラ、リアをミリ波レーダー、さらに近距離を音響センサーで監視する。全周監視ではないが、精度は旧世代に比べて飛躍的に上がった。

 旧世代に対するアドバンテージは認識能力の向上で車線を失探しにくくなったこと、隣車線からの割り込みへの対処が的確になったこと、車線に近づいていないのに近づいていると誤認識するケースが格段に減ったことなど。ステアリング制御のスムーズさでは日産の「プロパイロット」に一歩譲るが、ドライバーの感覚と機械の制御の調和は実によく取れていて、マン-マシンのコンフリクトが少ないのは美点と言えるポイントだ。

 Zグレードにはナビ機能付きのディスプレイオーディオが標準装備。このユニットはコネクティビティの端末にもなっており、スマホなどをWi-Fi接続できるホットスポット機能も持つ。値段は1GBあたり税込み330円。今日では無制限接続や10GB、20GBといったリッチな通信サービスが普及しつつあるためどこまで使われるかはわからないが、スマホの通信プランが貧弱なユーザーにとっては有用だろう。

 難点はナビ機能の性能があまり良くないこと。ホンダ車でこのタイプのナビを最初に見たのは2018年発売の「インサイト」。旧型アコードやバッテリーEVの「Honda e」あたりまでは誤作動やフリーズ連発という有様だったが、ここにきてさすがに安定性は大幅に向上した。

 ホンダは交通状況の分析は得意で、東日本大震災時には車両のコネクティビティ情報から通行可能な道路を割り出す「通れる道マップ」を地震の翌日に提供するなど実績は十分。ナビも高速料金の低減と所要時間の短縮をうまくバランスさせたスマートルート、通行料金なしの道路だけを選ぶ最速無料優先ルートなど、豊富なルートファインディングメニューを持っている。所要時間の予測も平均車速固定ではなく交通状況を勘案したもので、非常に高精度だ。

 そういう機能自体は今のカーナビにも生かされているが、ソフトウェアのコードが煩雑なのかハードウェアの能力が低いのか、検索のスピードが遅く、道を間違えた時の自動再検索の賢さも以前ほどではない。協力関係にあるソフトハウスとの連携を深めて能力を増強していただきたいところだ。