辛口レビューまとめ
「安くないクルマ」ならではの個性とは?

 ルーフが低く、荷物の積載性より人の空間確保と快適性を重視したZR-V。走り味や居住感は非常に優れており、セダンやハッチバックと同じ感覚である程度性能の高い、それでいてあまり大きすぎないSUVに乗りたいというユーザーには良いマイカー候補の一つになり得る。

 もったいなく感じられたのは、仕様がやや硬直的なこと。ちょっと輸入車っぽいバタ臭さを帯びた商品性を有しているのだから、グラストップは無理でも海外仕様には設定があるサンルーフくらいは全適用でも良かったのではないかという気がする。

 内装も黒以外に一つ二つあったほうが良かった。価格の安いモデルなら現状で万々歳なのだが、ZR-Vは国産の競合モデルに対して価格が高い。「そもそもお安くないクルマなのですよ」という積極的な表現が欲しくなるところだ。

 もっとも、それがなくとも全長4.5m台、全高1620mmというサイズ感の高性能SUVはライバルの少ないニッチマーケットである。モロ被りしそうなのは国産勢では見当たらず、輸入車勢をみてもイタリアのアルファロメオ「トナーレ」、ドイツのBMW「X1」など少数だ。

 ホンダにとっては十分高付加価値モデルなので、内装のピアノブラック部分をダークなえんじ色にする、ステッチの色を変えるなどの手法で差し色をあしらったり、限定色を定期的に用意したりといった方策で継続的に商品性を育てることに期待したい。