糖尿病の人は性別を問わず、「骨粗鬆症」にもなりやすいPhoto:PIXTA

 今月20日は「世界骨粗鬆症デー」だ。

 骨の構造はよく鉄筋コンクリートの建造物にたとえられる。健康な骨は、鉄筋に相当するコラーゲン線維束が整然と並び、その周囲にコンクリートに相当するハイドロキシアパタイト(カルシウムなどのミネラル成分)が付着することで、強度としなやかさが保たれているからだ。

 一方、骨粗鬆症の骨は、加齢やホルモンバランスの乱れなどの影響で、ミネラル成分=コンクリートが減少しコラーゲン線維=鉄筋も劣化した状態。当然、建造物=骨の強度が低下して、ちょっとした衝撃で骨折が生じる。

 高齢女性の病気と思われがちだが、I型/II型糖尿病の人は性別を問わず、コラーゲン線維の劣化が進むタイプの骨粗鬆症になりやすい。ミネラル成分の密度を表す「骨密度(骨量)」が正常でも、肝心の鉄筋がもろければ骨強度は落ち、骨折リスクが上昇する。

 血糖値が正常な人と比べ、足の付け根部分の骨折リスクはI型糖尿病で3~7倍に、II型糖尿病で1.3~2.8倍にもなるのだ。

 このほか、高齢のII型糖尿病患者では、ささいな動作で背骨がつぶれる「椎体骨折」リスクも上昇する。糖尿病患者は痛みの感度が鈍りがちで、気が付かないうちに椎体を圧迫骨折しているケースも多い。背中が重苦しい、いつの間にか猫背になった、伸ばせないなどの症状に注意したい。

 糖尿病患者が骨の健康を守るには、最適な血糖値の維持が先決だ。HbA1c7~8%超のコントロール不良が続くと、骨折リスクが有意に上昇する。

 罹病期間の長さも骨折リスクになる。II型糖尿病の治療を始めて10年以上たつ人は、一度は骨密度測定を受けてみよう。できれば背骨と股関節の骨密度を測定する「DXA法」が望ましい。

 普段の生活では、運動療法としてダンベルウオーキングや筋力トレーニングなど、骨に刺激を与えるエクササイズを追加すると骨強度アップにつながる。

 そのほか、カルシウム吸収を助けるビタミンD不足に陥らないよう、適度な日光浴も忘れずに。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)