では、高市首相は、そのような麻生氏を筆頭とした自民党内の「財政健全化」派議員たちを力でねじ伏せるのか。今、強く主張されているような「積極財政」を、内閣総理大臣となってからも変わらずに同じトーンで主張できるのか。

 残念ながら、それは無理な話だろう。

 今の自民党内の力学的に、高市首相の誕生には麻生氏の力が必要不可欠だからだ。冒頭で紹介した言葉からもわかるように、高市氏が総裁選であと一歩のところで勝利というところまで善戦したのは、党内で唯一派閥を率いる麻生氏が「高市支持」にまわったことが大きい。先ほど申し上げたように「仲間たちが“神輿”として担ぎ上げてくれる」ということではじめて首相になれるというシステムでは、高市氏が最も耳を傾けなくてはいけないのは麻生氏だ。

 つまり今、石破首相が国民からボロカスに叩かれている「変節」と同じようなことが、高市首相にも起きる可能性が十分にあるのだ。

 しかも、「変節」の中身によって今、高市氏を熱烈に支持している党内の保守派も離れてしまうだろう。最もそのリスクが高いのが、靖国神社参拝だ。