つまり、高市首相に支持者が一番に期待するのは、財務省が唱える「財政健全化」をぶっ潰して、景気が良くなるまでじゃんじゃんとお金を刷って国民にバラまくということなのだ。

 ただ、これは恐らく不可能だ。麻生氏がいるからだ。

 ご存じのように、麻生氏は2012年12月から21年10月までの8年9カ月間、財務大臣を務めた。日本政治史でここまで長く連続して財務大臣を務めた人物はいない。しかも、後任は自派閥で義理の弟の鈴木俊一氏である。この期間も含めたら、11年以上、日本の財政を取り仕切ってきた、いわば「財務省の守り神」である。

 そんな人物なので当然、「積極財政」は全否定している。前々回の総裁選で高市氏が、物価上昇率2%を達成するまで基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を凍結する方針を主張した際には、高市氏の主張の根拠とされる「現代金融理論」(MMT)に触れながら、こう否定している。

「放漫財政をやっても大丈夫なんだというような、簡単に言えばそういうことが書いてあるんですけれども、そういうものの実験場に日本のマーケットをするつもりはありません」(麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要 令和3年9月10日)