建設業界で世界シェア1位のキャタピラーは、23年12月期のROE(自己資本利益率)が約53%となった。一方で、同2位のコマツは約12%だ(24年3月期)。株式市場が注目する重要な指標において、業界トップ2社の間に大きな差がついた理由とは何だったのか。指標を“分解”して詳しく見ていこう。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)
>>前編『コマツとキャタピラー、建設機械トップ2社の「意外な大差」の正体』から読む
ROEの展開式から見えてくる
コマツの経営課題
前編では、建機業界で世界シェア1位のキャタピラーと2位のコマツの決算書を比較してきた。その中で、コマツは自社がKPI(重要業績評価指標)として定めているROE(自己資本利益率)と、ROA(総資産当期純利益率)において、キャタピラーに大差をつけられていることが明らかになった。後編では、その理由について探っていくことにしよう。
ROEやROAを分析する際に有用なのが、ROEの分解式だ(下図)。
この分解式によれば、ROEはROA(総資産当期純利益率)と財務レバレッジの掛け算に分解できる。また、ROAは売上高当期純利益率と総資産回転率の掛け算に分解できることから、最終的にはROEは売上高当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジという3つの指標の掛け算に分解される。
ROEやROAに差が生じた理由を分析する際には、こうした指標に分解することで、より詳細に読み解くことができるのだ。
では、コマツとキャタピラーのROEを分解してみよう。