ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)は、ニュースでよく目にする指標だ。KPI(重要業績評価指標)として採用する企業も多い。建設機械大手のコマツもその一つだ。今回は、建設機械業界シェア1位の米キャタピラーと、2位のコマツの決算書からその特徴と、ROEやROAに表れた違いを見ていこう。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)
過去最高益を更新
建機業界のコマツとキャタピラー
今回は、建設機械業界でグローバルな2大メーカーとして知られる、小松製作所(以下、コマツ)と米キャタピラーの決算書を取り上げる。
コマツは、建設機械・車両や産業機械などを手掛けており、世界シェアで第2位に位置している。同社の2024年3月期連結決算では、売上高が約3兆8650億円、営業利益が約6070億円、当社株主に帰属する当期純利益(親会社株主に帰属する当期純利益に相当、以下、単に当期純利益と呼ぶ)が約3930億円となった。それまでの過去最高であった23年3月期からの増収増益となり、売上高、営業利益、当期純利益においていずれも過去最高を記録している。
キャタピラーは、建設機械、鉱山用機械、エンジン、産業用ガスタービンなどを製造しており、世界シェアでは第1位となっている。キャタピラーの23年12月期決算の売上高は約671億ドル(1ドル141円換算で約9兆4550億円)、営業利益が約130億ドル(同約1兆8280億円)、当期純利益が約103億ドル(同約1兆4570億円)だ。こちらも22年12月期からの増収増益であり、過去最高を記録した。
このように、業績好調な両社ではあるものの、実は決算には大きな差が生まれている。
今回は、決算書に加えて、コマツがKPI(重要業績評価指標)としているROE(自己資本利益率)や、ROA(総資産利益率)といった指標を取り上げて、両社の決算に大きな差が生まれている要因や、コマツが抱える経営課題について解説する。