コニカミノルタがハマった事業転換の「落とし穴」、ヘルスケア事業が不調なワケ写真はイメージです Photo:123RF

今回は、「コニカミノルタ」を取り上げる。「カメラ」と「フォト(写真)」の二大事業を手放し、大規模な事業転換に乗り出した同社だが、23年3月期において1170億円もの減損損失を計上した。その背景を探ると、コニカミノルタがはまった「落とし穴」が見えてきた。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

大規模な減損損失を計上した
コニカミノルタ

 2023年5月15日、コニカミノルタは23年3月期の決算において約1170億円もの減損損失を計上したことを発表した。

 コニカミノルタは、03年8月にコニカとミノルタが経営統合して生まれた会社だ。カメラやフォト(写真)事業で知られた両社だが、経営統合後の06年3月にはカメラ事業を、07年9月にはフォト事業を終了。ミノルタが開発した世界初のオートフォーカス一眼レフカメラ「α-7000」を源流に持つ「α」ブランドなどのデジタル一眼レフカメラ事業は、ソニーへと譲渡された。

 現在では、複合機やITサービス・ソリューションなどを提供する「デジタルワークプレイス事業」、デジタル印刷システムなどを手掛ける「プロフェッショナルプリント事業」、画像診断システムや遺伝子検査サービスなどを行う「ヘルスケア事業」、計測機器やディスプレー、映像関連機器などを手掛ける「インダストリー事業」を主力としている。

 特に最近では17年10月に産業革新機構と共同で遺伝子診断会社の米アンブリー・ジェネティクス(以下、アンブリー)を、同年11月には創薬支援の米インヴィクロを買収するなど、ヘルスケア事業に注力してきた。

 本連載の第18回「富士フイルム・ニコン、明暗分かれた背景に『縮小市場』への向き合い方の差」https://diamond.jp/articles/-/289843)でも取り上げた富士フイルムホールディングスと同様に、カメラや写真を中心とした事業からの構造改革を進めてきた形だ。

 実は、コニカミノルタが巨額の減損損失計上に至った背景には事情がある。決算書のデータをひもとくと、同社がはまった「落とし穴」の正体がわかった。