石井正則医師によると、耳の不調を訴える人の大半は「脳が疲れている」と言います。脳が疲れている人の顔にでる「異常なサイン」とは?薬要らずの簡単ケア方法まで、ジャーナリストの笹井恵里子さんが聞きました。(JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長 石井正則、構成/ジャーナリスト 笹井恵里子)

脳が疲れていると
耳の症状は悪化する

JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長・石井正則医師JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長・石井正則医師。

 前回お伝えしたように、難聴(聴力低下)の直接の原因は、耳の中の音センサーである有毛細胞の脱毛です。

 さらに生活習慣病を患っている人や、肥満の人が発症しやすいという研究結果を説明しました。そしてもう一つ、加齢性難聴をはじめ耳の不調を訴える人の大半に共通していることがあります。

 それは「脳の疲れ」です。脳が疲れていると、耳の症状は悪化します。

 例えば耳鳴りなら、脳が疲れていると耳鳴りの大きさが100倍から1000倍にも跳ね上がってしまいます。本来、健康な成人でもごくわずかな耳鳴りはあるのですが、生活音にかき消されて普段は気になりません。ところが脳が疲労し過ぎると、このわずかな耳鳴りに対して脳が過敏に反応し、耳鳴りがうるさく聞こえてしまうのです。

 先日当院を受診し、中等度難聴の診断を下した55歳の男性も、当初「耳鳴りがうるさくて眠れません」と話していました。しかし、耳鳴りがうるさいから眠れないのではなく、眠れない状態になったから耳鳴りが大きくなったのです。

 ですから脳の疲れを癒やせば、耳鳴りも小さくなっていきます。また失われた聴力は回復しませんが、これ以上難聴が進行することを防げます。

脳を疲れさせる3つの要因とは?
3つ目が特に重要

 脳を疲れさせる要因は、3つあります。

 まず1つ目は、「体の疲れ」です。私が問いかけると、その男性は「たしかに体の疲れはたまっているかもしれません」と答えました。

 次に「睡眠不足」も、脳を疲れさせます。男性も「たしかに耳鳴りがあって睡眠の質が悪い気がします」と言います。

 そして、3つ目の問いが一番重要です。