中小企業同士のM&Aでトラブルが頻発していることを受けて、会社を売りたいオーナー経営者と買い手企業の間に立ってM&Aの成立を支援する、M&A仲介会社の存在に注目が集まっています。そこで、業界の内情に迫った特集『沸騰!M&A仲介 カネと罠』を再配信します。(記事初出時:2022年2月16日 ※記事内容は初出時のまま)
M&A仲介業界には、金融業界や不動産業界と違い、仲介業を行うための業法や国家資格が存在しない。ストライクの荒井邦彦社長は、M&A仲介業の業務品質の向上が、各社のコンサルタントの倫理観に委ねられている現実は、業界の課題の一つだと指摘する。特集『沸騰!M&A仲介 カネと罠』(全15回)の最終回では、同社の戦略や業界の課題から、今後の展望まで話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 片田江康男)
着手金の無料化を決断
その狙いと効果は?
――M&A仲介業界では、最大手の日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズと並び称されることが多いと思います。ビジネスモデルがほとんど同じですが、どのように差別化していくのでしょうか。
差別化については、よく質問されることなのですが、実は私自身、あまり意識したことはないんです。
私たちの会社はまだ社員が200人程度、社歴もまだ25年です。差別化についてあまり考えても仕方ないかなと思っています。
――しかし、事業承継のためにM&Aを検討している売り手企業に、数あるM&A仲介会社の中から選んでもらわなければならないわけですよね。
売り手の経営者にとって、仲介会社を選ぶ理由は本当にそれぞれ。規模が大きい仲介会社がいい方もいらっしゃいますし、じっくり時間をかけて自分の会社に合った買い手を選びたいという方もいて、多様化しています。売り手のニーズ、志向、時間軸によって、選ばれる仲介会社が変わるのだろうと思います。
M&Aの目的が事業承継の場合、売却価格を最優先にする売り手はあまりありません。経営が安定している企業、今後も働く社員が安心できるところ、そうした価格以外の条件を重視する場面をたくさん見てきました。私はM&Aって本来そうあるべきだと思っています。
――ストライクは2021年7月、着手金を無料にしました。その狙いは何でしょうか。