自民党が大敗した衆議院議員選挙で、政府の半導体支援を推進してきた大物議員、甘利明氏が敗北した。甘利氏は経済安全保障政策に通じ、日本の半導体産業の復興に並々ならぬ意欲を燃やしてきた、いわば“半導体のドン”。甘利氏の落選により、巨額の国費を投じてきた半導体の政府支援は滞ることになるのか。米トランプ政権は日本の半導体政策にどのような影響をもたらすことになるのか――。特集『半導体の覇者』の#4では、甘利氏本人が、選挙後初めてダイヤモンド編集部の独占インタビューに応じ、「半導体政策の今後」から「自身の出処進退」まで、余すところなく語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二、同編集長 浅島亮子)
落選から議員会館退出までの数日で
財務省と「最終決定案」を詰めた
――甘利さんは、自民党・経済安全保障推進本部本部長や同・半導体戦略推進議員連盟(半導体議連)会長として、半導体産業を復活させようと汗をかいてきました。甘利さんが選挙で残念な結果となり、今後は政府による半導体支援が継続できるのかどうか、政財界では懸念する声が上がっています。
議員になってから41年、初めて土日祝日のある生活を送っています。おかげさまで、皆さんから「今後、どうするんだ」とお声掛けいただいているところです。
――選挙後すぐに、石破政権はAI(人工知能)・半導体産業に2030年度までの7年間で10兆円以上の公的支援を行う方針を示しました。旗振り役である甘利さんの落選により、政府の半導体支援の継続が危ぶまれていましたが、むしろ10兆円という金額が示され支援が強化されるように見えます。10兆円の財政フレームは経済産業省と財務省との間で調整されてきたことが形になったということなのでしょうか。
そうです。財務省の官僚とは、選挙が終わってから、議員会館の部屋を出るまでの数日の間に、最後のところを詰めました。
――そのような慌ただしいタイミングで決まったんですね。今年6月の「骨太の方針」でも、半導体に関しては、(補正予算のように場当たり的に資金を投じるのではなく)必要な財源を確保しながら複数年度にわたり大規模かつ計画的に量産投資、支援を行うと示されました。甘利さんが一番こだわったポイントはどんなところでしょうか。
AI・半導体に「公的支援10兆円」を投下する方針が固まったのは、甘利氏の落選直後だったという(半導体議連は11月19日に総会を開き、後任会長に山際大志郎・元経済再生相を選出。甘利氏は名誉会長に就いた)。自民党の大敗で半導体支援に待ったがかかると思いきや、むしろ支援が強化される方向で着地したのはなぜなのか。米トランプ政権は日本の半導体政策にどのような影響をもたらすことになるのか。次ページでは、半導体政策の今後から自らの出処進退まで、本音で語ってもらった。