半導体の覇者#7Photo:JIJI

米半導体大手のエヌビディアのAI(人工知能)向け半導体に日本企業が巨額投資する動きが本格化してきた。国内で最大規模の投資を表明しているのがソフトバンクだ。さらにトヨタ自動車とNTT連合もAI半導体の調達に乗り出す。特集『半導体の覇者』の♯7では、国内で本格化してきたエヌビディア製GPU(画像処理半導体)争奪戦の行方を追う。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

AI半導体の巨額投資に懸ける
ソフトバンクとトヨタ・NTT連合の二大陣営

「ソフトバンクと一緒に日本国内で最大のAIファクトリーをつくり出す」

 11月13日、米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者は東京都内で開かれた自社イベントの講演で、ソフトバンクがエヌビディア製のAI(人工知能)半導体を大量に導入して、巨大なAIデータセンターを構築していることを紹介した。

 ソフトバンクは2023~25年度に総額1700億円の投資規模で、エヌビディアのデータセンター向けGPU(画像処理半導体)を購入する計画を進めている。

 この講演には、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も登壇。AIデータセンターの構築には数千億円レベルの資金が必要になるが「それに懸けている」と覚悟を見せた。

 これに対抗するように巨額のGPU投資に乗り出そうとしているのが、トヨタ自動車とNTTの連合だ。30年までに5000億円規模を共同で投資して自動車向けのAI基盤を開発する構想で、国内に分散型のAIデータセンターを構築する。

 NTTの島田明社長は「トヨタとはGPUへの大きな投資を一緒にしていくことになる」と述べ、エヌビディア製GPUへの巨額投資に意欲を示している。

 生成AIの基盤となるLLM(大規模言語モデル)の開発競争の激化とともに、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフトなど米国の巨大IT(情報技術)企業が年間数兆円の設備投資を計画して、AIサーバーやデータセンターへの投資を加速しているが、日本企業もエヌビディア製のGPUを調達してAIデータセンターを構築する動きを本格化させてきた。

 次ページでは、ソフトバンクとトヨタ・NTT連合の二大陣営によるGPU投資の戦略に迫る。さらに、そこから浮き彫りになった三つの課題を明らかにする。