11月15日に開催された、損害保険業界の構造的課題を議論する金融審議会(首相の諮問機関)。今回で4回目となるが、企業内代理店や比較推奨販売など多岐にわたる論点について議論が行われた。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、企業内代理店に対する規制の行方や議論の中身について詳報する。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
代理店としての自立や保険料の割引など
企業内代理店を巡る複数の論点
Q 11月15日に、損害保険業界の構造的課題について議論している金融審議会(首相の諮問機関)の4回目の会合が開かれましたが、約3時間と長かったですね。
A 企業内代理店の在り方と乗り合い代理店における比較推奨販売の適正化、損害保険分野における自主規制の在り方、火災保険の赤字構造についてと、テーマが多かったですね。12月中に報告書案を取りまとめないといけないですからね。
Q 年明けにはパブリックコメントを募り、春には監督指針やガイドラインの改正をしなければなりません。
A その後は保険業法の改正も予定されていますので、何らかの方向性を出さないといけません。とにかく急いでいる印象ですね。
Q 一つ目の論点である「企業内代理店(機関代理店)」ですが、改めてどのような課題があるとの認識でしょうか。
A 事務局資料に掲載されている有識者会議での資料を見てみましょう。
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企業内代理店とは、保険業以外の事業を営む企業に属する保険代理店のことですが、企業と保険会社の双方を代理するため、その立場は不明確とされています。また、顧客である企業の一部門であることから、保険会社による適切な監督や指導がしづらいとも指摘されています。
そして、企業内代理店が所属する企業の保険契約を取り扱う場合、保険会社が企業内代理店に支払う手数料が保険料の割引に該当するのではないか、といった指摘もあります。特別利益の提供に当たるのでは、ということですね。
Q 保険会社からの監督や指導が行き届きにくいのに加え、所属企業の保険を取り扱えば一定の手数料収入が得られることから、保険代理店として自立していないのではないか、といった懸念もあるようですね。
A そうした指摘もなされていますね。ただ、企業内代理店によってかなり実情が異なっています。金融庁が企業内代理店にヒアリングを行った結果が事務局資料に掲載されていますが、「事業者との近さを生かして、保険契約者のニーズを的確に捉えている」「保険の専門家としての立場を生かして、迅速に手続きを終え、適切な商品選択に結びつけている」など、レベルの高い企業内代理店の事例も取り上げています。
Q 損保のカルテル問題が取り沙汰されるまで、企業内代理店について話題になることはありませんでした。それだけに実態が分からず、どちらかというとネガティブなイメージが大きかった気がします。
A そうですね。そういう意味では、大手の企業内代理店が中心のようですが、金融庁がヒアリングをして実態が見えるようになりましたね。
Q では、金融審議会では企業内代理店について、どのような意見が出たのでしょうか。