11月29日、大型乗り合い代理店のFPパートナーに金融庁が立ち入り検査に入った。生保に過度な便宜供与を求めた実態を調査するためだ。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、その裏でFPパートナーが行なっている金融庁の矛先をかわすかのような動きを詳らかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
金融庁がFPPに立ち入り検査へ
生保に「便宜供与はない」との要請も
11月29日、生命保険系の大型乗り合い代理店「マネードクター」を展開するFPパートナー(以下、FPP)に、金融庁が立ち入り検査に入った。FPPが生保会社に対して過度な便宜供与を求め、さらに便宜供与を行なった生保の商品を優先的に顧客に推奨している疑いが持たれているが、その実態を検査で追及するためだ。
実際、これまで生保各社は大規模代理店であるFPPに対して、数多くの便宜供与を行ってきた。特別待遇の手数料体系を用意したり、保険ショップであるマネードクターの店舗に過大な広告費を支払ったりしたことは序の口。多数の保険の見込み客を送客するだけではなく、生保や他代理店から募集人を意図的にリクルートしてFPPにあっせんするなど、数え上げればきりがない。
これら便宜供与は自社商品の販売拡大を期待して行なってきたものだが、金融庁が生命保険協会経由で生保各社に行ったアンケートでは、便宜供与はFPPの黒木勉社長からの要請で行ったものが多いことが明らかとなっている。
このあたりの詳細は、以下の保険ラボの記事で詳述している。(『乗り合い保険代理店最大手・FPパートナーの社内キャンペーンに透ける、生保会社との「もたれ合い」の構図』、『FPパートナーが特定生保の割り増し評価ストップ、「おねだり代理店」陥落の深層』参照)
もっとも黒木社長からすれば、長年にわたりやってきたことなのに加え、推奨商品の選定において、FPPに便宜を図った生保を優遇することは当然のこと、選定理由の一つでしかないのだろう。だが、そうした黒木社長の認識は、旧ビッグモーターの問題が発覚して以降、もはや通用しなくなっている。
その感覚のずれが、9月6日に金融庁がFPPに対して発出した報告徴求命令に対する回答に色濃く出ていたのだろう。実際、「最近の黒木さんは余裕をかましていますよ。金融庁を舐めているんでしょうね」と、複数の生保幹部は言う。
さらに、金融庁の矛先をかわすためか、FPPにとって都合のいいように生保に圧力をかけようとしている。それが、複数の生保に対して送付した、「保険の見込み客情報の提供に関する確認書」の作成要請だ。
加えて社内ルールの変更を行うことで、批判をかわそうとしているかに見える。次ページでは、その詳細を明らかにしていく。