岸田文雄前首相が立ち上げた「コンテンツ産業官民協議会」。その中で中心的な役割を果たしたのが、現在外貨獲得額でもトップとなるゲーム業界だ。国も重点産業として支援と産業育成策を打ち出している。一方で、世界のゲーム業界の「ゲームシステム」は怒濤の勢いで変化している。任天堂、ソニー、そして日本のゲームメーカー各社はその波に乗り切れるのか。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#1では、にわかに国を挙げた振興策が盛り上がり始めた日本のゲーム業界を概観しよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
世界市場は50兆円規模に成長も!
変わる「ゲーム業界のゲームシステム」はどうなる?
2024年9月9日。電撃退陣を発表し揺れていた岸田文雄総理大臣(当時)官邸を、映画監督の庵野秀明氏や俳優の大沢たかお氏などと共に日本を代表するコンテンツ業界の幹部ら総勢15人が訪れていた。
岸田前政権下の「新しい資本主義」政策の一つとして立ち上げられた「コンテンツ産業官民協議会」の参加者としてだ。日本のコンテンツ産業を国を挙げて推進していこう、という取り組みである。参加者の中には、ゲームの業界団体であるCESA(コンピュータエンターテインメント協会)の会長でカプコン社長の辻本春弘氏もいた。
「日本のゲーム産業は、日本を代表する成長産業であり、海外市場での外貨獲得の面でも有数の産業である。国としても支援をしていただきたい」。辻本氏はこう訴えた。ゲーム業界が、官邸でこうした提言を行ったのは、今回が初めてだったという。
かつて「子どもの遊び」だったゲームは、現在では巨大な市場に成長した。PwCの「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック 2024-2028」によると、世界のゲーム市場は、23年に2276億ドル(約32兆2191億円)に達した。そして28年に3000億ドル(約43兆4310億円)を超える見込みだ。市場全体の規模は、18年から1000億ドル以上増えており、ほぼ倍増。このままいけば50兆円規模に成長するのも目前だ。
市場規模が爆増する中、実は、日本にとってゲームは貴重な外貨獲得産業ともなっている。辻本氏が官民協議会に呼ばれたのもその一環で、国もゲーム業界に対しての振興策を打ち出し始めているのだ。
一方で、世界のゲーム市場のルール、いわば「ゲームシステム」が激変している。日本企業のみがゲーム業界の趨勢を左右した時代はすでに過去のものになっている。ライバルは米国にも中国にも韓国にも、そして異業種にもいる。
巨額市場であるゲーム産業で、一体何が起こっているのか。世界にはあらゆる種類の競合が現れ、ゲームそのものの内容から稼ぎ方に至るまで、実に多様な方法でさまざまなビジネスを展開しているのだ。次ページから見ていこう。