外貨獲得で半導体・鉄鋼レベルに! 50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム#23写真提供:スクウェア・エニックス

小学生男子の人気職業ナンバーワンである、ゲームクリエイター。だが、具体的にどうすればゲームの仕事ができるのか、については意外と知られていない。ゲームを仕事にするには何が必要なのか?足元の就職や転職、そして給料の状況は?さらにゲーム会社はどのように人材を採用・育成しようとしているのか。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#23では、専門人材エージェントとスクウェア・エニックス・ホールディングスへの取材から「ゲームを仕事にする」ことの実態について見ていこう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

新入社員が全役員の前でゲームを開発・発表する
スクエニ名物「ゲーム開発ブートキャンプ」

 スクウェア・エニックス・ホールディングスには、新卒入社した開発系職種の社員が、基礎研修を終え入社気分も冷めやらぬうちに必ず送り込まれる「ブートキャンプ」があるという。

 といっても新兵訓練用の地獄のワークアウトではない。チームに分かれて、1カ月半の間ゲーム作りに没頭するGameDev Boot Camp(GDBC)という社内研修である。1カ月半で作り上げたゲームは、全役員の前での講評会や審査会にかけられる。桐生隆司社長はもちろん、ドラゴンクエストのプロデューサー経験者などの有名クリエイターもいる。新入社員にとっては、肉体的にはともかく精神的には入社早々いきなり緊張が高まるブートキャンプである(上写真はその一こま)。

 この研修が終わると、特にプログラマー職種の社員に対して、開発で用いるC++言語を使った具体的なゲームの作り方についての研修が、自身もFINAL FANTASY XVのメインプログラマーなどを歴任したエンジニアが講師となってみっちり3カ月間行われるという。

 スクエニが新人研修を、現場のスタークリエイターなども動員して強化しているのはなぜか。「ゲームの開発職として採用される新人のゲーム制作知識やスキルのレベルには、ばらつきがある。以前は現場でのOJTを通してゲーム作りを学んできたが、開発が数年間などと長期化する中で人を育てにくくなってきた」と松岡剛史・スクウェア・エニックス人事部ジェネラルマネージャーは背景を説明する。

 小学生の憧れの職業であるゲームクリエイターだが、ゲーム専攻の大学は実質的にはまだなく、専門的な教育機関は専門学校のみだ。そして「大手ゲームメーカーのプランナー、エンジニアなどの企画職については大卒採用が、デザイナーなどについても美術大学卒が多くを占める。専門学校卒は、その学校のトップの一握り以外はなかなか大手には入れない」と、ゲーム業界に特化した人材エージェントの島崎隼輔・レバテックCRゲームグループグループリーダーは明かす。

 となると、まさにスクエニのように、これまで一度もゲームを作ったことがない大卒が集まるというところから人材教育をスタートする必要が出てくるわけだ。

 ゲーム会社の最大の資産は新たなゲームを作り出す人である。人材を自社でしっかり育成してリテンションを図ることが企業の存続のためにも重要になってきているが、ゲームの高度化によって求めるゲーム人材は外部から容易に調達できるものでもなくなってきている。

 実は他業界からの転職が非常に難しいのも特徴だ。キャリアパスも含め業界外にはあまり知られていない「ゲームを仕事にする」実態について、専門エージェントに詳しく話を聞いた。上は年収2000万~3000万円、下は500万円以下という格差のあるゲーム業界で、トップに立つのはどの職種か、どうすればなれるのか。次ページから見ていこう。